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世界で一番君が嫌い  作者: びゅー
1章 法律
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1章-09 過去

サヤ「さいてー…って、寝ちゃってるよ」

アヌビス「しっかしこいつ偉そうだよなー…年の割に」

ノルン「でも判断力はなかなかのものだと思うけどな」

サヤ「まあ、最低にも最低なりにいろいろあるから…ね」

アヌビス「例の母親の件…か?」

ノルン「母親の件?」

サヤ「…うん…言っちゃっていいのかな…」

サヤはちらっと最低の方を見た。

サヤ「…たぶん、いいかな」

そしてサヤは、ゆっくり語り始めた。

サヤ「…最低の、いや、ナオヤのお母さん、本当のお母さんじゃないの。本当のお母さん、5年前の事件で死んじゃったの」

アヌビス「5年前の事件?」

サヤ「5年前、夏の終わり頃」

アヌビス「…それって……まさか、キャットフードの焔日か!?」

サヤ「そう」


わたしまだ小さかったからほとんど覚えてないんだけど

いつも夜になると空って暗くなるでしょ?その日は違ったの。

真っ赤だった。空が燃えているみたいだった。

その時はまさかあんなことが起こっていたなんて想像もしなかった。


ノルン「キャットフードの焔日…。っていうと確か、

城下町として賑わっていたキャットフードから原因不明の火災が発生。

消防省の懸命の努力にも関わらず火は燃え広がり続け、

街は一晩にしてその姿を消した。

死者は12000人。全人口の実に40%。

…わたしがキャットフードに引っ越してきたのはそれより後のことだからよくは知らないのよね…なんでも事件の被害者の生き残りはそれぞれ様々な村へばらばらに散っていったとか」

サヤ「ナオヤも、その一人だった。そしてナオヤの母親は、その事故で死んだ人の一人。

ナオヤは父親、妹とともに、カニクリーム村に住む一人暮らしの女性のもとへ引き取られたの」


…でも、ナオヤが大変なのはそれからだった。

ナオヤのお父さんは事故以来、妻をなくしたこともあって精神を病んでしまい、部屋から一歩も外に出なくなり、誰とも会話すらしなくなった。

…そう、実の子であるはずのナオヤとその妹にすら。


ノルン「…一体、なぜ?」

サヤ「わかんない。何かとてつもない負荷が精神にかかったってお医者さんは言ってたんだって」


父親がそれじゃあ当然働けないし、

妹はまだ当時3歳にも満たない。

その女の人の稼ぎだけでは家族4人は養えない、

だから、ナオヤは、自分の食べる分だけ、自分で稼がないとならなかったの。


『自給自足じゃないの?』

『そんなものは理想論だ、現実的には不可能だよ』


ノルン「そりゃ、大変ね…」

アヌビス「子供だからってバカにされたら終わり、そうしないと仕事なんてやらせてもらえねえ…か。なるほど。あんだけ偉そうなのもうなずける」

ノルン「でもなんでそんな彼とサヤが知り合いなの?」

サヤ「まあ、一言で言えば似たもの同士かな。

…かなり不本意だけどね」

アヌビス「うーん。でもサヤちゃんはなんていうか、まだ可愛げがある。

こいつは…救いようがない」

サヤ「あはは。ありがと」


わたしみんなから金の亡者って言われて散々イジメられてきたのよ。

そんなとき、引越ししてきた子の噂聞いたの。

それでその子見つけたんだけど、その子いつも一人で、しかも何考えてるか分からないくらい無表情で、

ひょっとしたら…って思って、「ね、ねえ、いっしょにあそぼうよ?」って声かけたの。

それが私と最低との最初の出会い。


アヌビス「なんか今とは随分違うな」

サヤ「うん。昔はあの最低とんでもなく根暗だったから」

ノルン「で?それからそれから?」


そしたらね…

「はあ?何でお前なんかと遊ばなきゃ何ねえんだよ?そんな暇ねえよ」

って言われてね。


アヌビス「なんつーやつじゃ…」

サヤ「ありえないでしょ!?」

ノルン「それでそれで?」


ショックでショックで…

今だに覚えてるわ。

私それで泣いちゃって…

それで最低が謝りに来てくれたの。

でも謝りに来たはずだったのに結局けんかになっちゃって…

でもその後、最低こんな手紙残していったの。


ごめん

おれ、感情のコントロールできないんだ

面と向かってじゃ、絶対当り散らしちゃうんだよ

だから、こんな形でしか謝罪できなくて、ほんとにごめん


アヌビス「ぷぷぷぷ」

サヤ「笑っちゃうでしょ?」

ノルン「それで?どうしたの?」


サヤ「何でも言うこと一つ聞くって、ホント?」

ナオヤ「………うん」

サヤ「じゃあ…

お金ちょーだい♪」


アヌビス「…」

ノルン「…はぁ」

サヤ「な、何よその反応!だってなんでも言うこと聞いてくれるなら普通お金せびるでしょ?」

ノルン「せびらない」

アヌビス「で、その後どうなったの?」

サヤ「結局ケンカになっちゃいました、と」

ノルン「へー…」

サヤ「それで…

いつのまにかどっちもそれなりに妥協して、

気付けばこんな感じになって、今に至ると」

ノルン「なんていうか、言葉も出ない」

サヤ「う、うるさいなあ、私たちだってハードな人生歩んできたのよ。

だからひねくれてるんだって」

アヌビス「…よくそんな奴と何年ももったねえ」

サヤ「まあ遠慮とかそういうのがあいつに対しては全く必要ないから、

そういう意味では気楽なのよね」

アヌビス「そういうもんかねえ…」

サヤ「それに、ああ見えて最低は、変に義理堅いところとかあるから」

アヌビス「義理堅い?」

サヤ「うん。約束なんか絶対破らないよ。

そういうところは恐ろしいくらいしっかりしてる。

後はやっぱりずるがしこい。私なんか比べ物にならないくらいずる賢い」

アヌビス「ふーん」

ノルン「確かに彼、ただ偉そうなだけのバカとは違うような気がするしね」

サヤ「どういうこと?」

ノルン「なんていうか、わざと自分を最低に見せてる、

って印象がある」

サヤ「わざと?でもなんで?」

ノルン「相手を油断させるためか…それとも」

ナオヤ「ああ、そういうのは違う違う」

起きてたの!?私たちはびっくりして心臓が飛び出しそうになった。

ナオヤ「おれが一番気楽だからだよ。

最低って呼ばれてバカにされてる方がな」

ノルン「そうなの?」

ナオヤ「ああ。相手に気なんかまったく使う必要がないだろ。

そういうの、めんどくさいって思うんだ」

ノルン「そうね。

そういうところは、いいんじゃないかな」

アヌビス「よくねえよ」


アヌビス「…そういや、ノルンちゃんは八音の旋律の一つをどこで見つけたの?」

ノルン「え?あれはね…うーんと、確か…どっかの遺跡を探検してた際に見つけてこっそり持ち出してきたの」

サヤ「…それって犯罪なんじゃ?」

ノルン「いいじゃん!どうせ誰も見に行かないようなちっぽけな遺跡なのよ。そこにたまたまバイオリンが置いてあったら誰だって持ち去りたくなるって」

サヤ「ちっぽけな遺跡だったの?」

ノルン「そうそう。その辺は遺跡がいっぱいある所で、考古学研究家達はそろいもそろってでっかい遺跡やら住居跡やらを掘り返してたのよ。まさかすみっこのちっぽけな遺跡に宝物が眠ってるとも知らずにね」

サヤ「ノルンはそんなとこにどうして行ったの?」

ノルン「私はお宝探しにいったの。で、誰もまだ調べてなかったその遺跡を調べて、見事発見、とそういうことよ。ある程度目星はつけてたけどね。なんでもその地方では、この楽器は神との交信に用いられてたんだってさ。それでわざわざ隅っこのほうに隠して人の目を欺いた、とそういうわけ」

サヤ「…ふーん。残り7つがどこにあるか知ってる?」

ノルン「全然知らない。別に全部集める気はなかったからね。私がギターとか集めても仕方ないし」

サヤ「そっか…ノルンでも知らないか…」

ノルン「その神の使いという人に聞いてみたら?神だったらどうせどこにあるか分かってるんでしょ?」

サヤ「それが神の力を借りるのはダメなんだってさ」

ノルン「けったいな話ね」

サヤ「全くよ」


ノルン「そろそろねよっか」

サヤ「そうだね」

アヌビス「…zzz」

ノルン「調べれるだけは調べてみるわね」

サヤ「何が?」

ノルン「八音の旋律」

サヤ「ありがと…」


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