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世界で一番君が嫌い  作者: びゅー
1章 法律
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1章-06 戦闘

岩山と岩山の間に、ちょっと大きな広場があり、

そこにテントが張られていた。

その中から、声が聞こえてきた。

サヤ「何だろ」

ナオヤ「静かに」

テントの隙間から中をのぞく。

女の子が一人、男が3人。

女の子は男たちに刃物を突きつけられていた。

女の子「用件は?」

男「お嬢ちゃん?

あんた自分の立場分かってる?偉そうなこと言ってると、そのほっぺたが赤く染まることになっちゃうぜ」

女の子「用件は」

男「言うまでもないだろう、昨日、俺たちのアジトに起こったことをお前は知っているはずだ」

女の子「?

なんのこと?

知らないわよ、そんなの」

男「嘘をつけ!ここにはお前と俺たちだけしかいねえんだよ!

俺たちがやってないならやったのはお前しかいないだろうが!」

女の子「知らないって言ってるでしょ。しつこいわね。

おおかたあんたらの下っ端の一人が裏切ったんじゃないの」

男「…んだと…」


サヤ「ノルンだ」

ナオヤ「あの青髪のお嬢様っぽい顔立ちの女がノルン?」

なんだか随分イメージと違う。

背はサヤよりほんのちょっと高いぐらいで、そう大差ない。

いかにも華奢で、見た感じ運動もまるでダメそうだ。

育ちのいいどこかのお嬢様といったところか。

とても一人で各地を転々としている探検家には見えなかった。

サヤ「そうそう。一見育ち良さそうなんだけどすっごいアクティブで…ってそんなのどうでもいいのよ。なんとかしないと」

ナオヤ「声がでかいぞ」

アヌビス「しっかし女の子一人に野郎三人とは…ふてえやつらだ」

ナオヤ「よし、ぶっとばしてやろうぜ」

サヤ「どうするの?」

ナオヤ「不意打ち」

サヤ「せこっ」

ナオヤ「せこいとかいうな。

そもそもこっちは子供なんだからそれぐらいしないと勝てない」


女の子「もう!寝ようとしてるところにいきなり入ってきて、とんだ言いがかりよ」

男「うるせえ!

もう勘弁ならねえ!覚悟しな!」

男が手に力を入れる。

ノルンはごくり、と唾をのみこんだ。


ナオヤ「失礼」

男「な、なんだ、このガキ…」

ナオヤはすばやく男の方へ歩み寄ると、目にも止まらぬ速さで足をかけた。

男「ぬわぁっ!」

男は不意をつかれ転倒する。

男B「あ、アニキ!」

ノルンにナイフを突きつけていた男は、

狙いをナオヤのほうへ変える。

男C「このガキ!大人の怖さ思い知らせてや…」

が、ナオヤのほうへ食って掛かろうとしたとたんに、倒れこむ。

ノルン「ちょろいわね」

ノルンはいつのまにか手にスタンガンを持っていた。

アヌビス「…やる~」

ナオヤ「あれ?手を貸す必要もなかった?」

ノルン「いや、ちょっと詰め寄られてたから危なかったかな。助かったよ。ありがと」

そういいながらノルンは最初に倒れた男めがけてスタンガンを突き刺した。

男はぐったりとその場に倒れこむ。

ノルン「ふう。

誰だか知らないけどありがとね。不意をつかれちゃって…って、サヤじゃない!」

サヤ「ノルン!久しぶり!元気にしてた?」

ノルン「なんでこんなとこにいるの?」

サヤ「実は…」


(事情説明)


ノルン「…ふーん」

サヤ「そういうことなのよ」

ナオヤ「というわけでだ、ノルン…さん?その白銀のバイオリンを譲ってはもらえないだろうか」

ノルン「うーん…ま、今も助けてもらったわけだし…結構大変な事みたいだから、あの楽器とりもどしたらあなた達にあげるわ」

サヤ「えっ、こんな話信じてくれたの!?」

ノルン「あたりまえでしょ。あんたと私の仲じゃない」

サヤ「ありがとっ」

アヌビス「でも、楽器大事なもんなんでしょ?」

ノルン「全然」

彼女は、あっさりそう言ってのけた。

ノルン「そういう事情があるなら、しかるべき人が持つ方がずっといいわ」

ナオヤ「…なんか随分話が早い気がするけど、いいんだな?」

ノルン「そこまで必死になって取り返さないといけないものでもないから、いいわよ。

…その代わり、協力して楽器取り返しましょ」

アヌビス「そこまで必死になって取り返さないといけないものでもないなら

なんで、今、こうして追っかけてるの?」

ノルン「人のいない間に人の物を勝手に持ち出して行った、

という事実に腹を立ててるのよ。わかる?」

ナオヤ「わからん」

ノルン「…」

サヤ「こいつは最低だからこいつの言うこといちいち気にしてたらキリないわよ」

アヌビス「まぁ、くれるって言ってるんだ、遠慮なくもらおうぜ」

ナオヤ「そうだな」

アヌビス「よし、そうしよう」

サヤ「ノルンがいたら心強いよ」

アヌビス「それにしても、さっき…

随分鮮やかだったな。あのスタンガンは常備してるの?」

ノルン「そうそう。備えあれば憂いなしでしょ。他にもいろいろあるけど、何かいる?」

そういうとノルンはポケットから改造銃やらバタフライナイフやらいろいろと危なそうなものを取り出した。

アヌビス「い、いえ、結構です」

ナオヤ「そんなに持ち歩いてて重くないのか?」

ノルン「ふふふ。これ持ってみたらわかるけど、すっごい軽いのよ」

ナオヤ「…げ、ほんとだ。

こんな銃、発砲の衝撃で吹っ飛んでいきそうだ」

ノルン「ところがここに固定用特殊素材が使われてるのよ」

ナオヤ「ほぉー」

アヌビス「こういう銃ってなんかの法律に触れないの?」

ノルン「キャットフードは個人に銃の所持を許可してるから大丈夫」


夜になろうとしていた。これ以上進むのは難しいので、ここで4人は休息することにした。

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