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世界で一番君が嫌い  作者: びゅー
プロローグ
12/116

序章⑫ 雑談-これからのこと

サヤ「…信じる?」

ナオヤ「…正直、ああまでいくとどうでもよくなってきた」

サヤ「…とにかく…問題は、それをどうやって私達が説明するかだよね」

アヌビス「ん?」

サヤ「だから、私達が、神様に頼まれて世界の滅亡を防ぐために八音の旋律を集めています、なんて言って誰が信じる?それを私達が信じさせないといけないのよ。よく考えたらおかしな話よね」

ナオヤ「そんなことしねえよ」

サヤ「えっ?」

ナオヤ「自分の願いをかなえるために集めてるんだ。

その通り説明するさ」

サヤ「それって、もっと大変だと思うんだけど」

ナオヤ「でも、それが筋ってもんじゃないかな」

サヤ「…お母さん」

ナオヤ「…」

サヤ「…ねえ、最低は、あの人本物だと思う?」

あの人が指すものは、考えなくてもすぐに分かる。

ナオヤ「…偽物だよ。おれにはわかる」

サヤ「…なんでわかるの?」

ナオヤ「…死んだ人間が生き返るわけないだろ」

まぁ、そりゃそうだが。

あのとき、本物だと感じたおれの感覚も確かなわけで。

サヤ「…じゃ、なんで集めるの」

ナオヤ「…偽物だとはっきりさせるため」

少なくともおれに関係あるのは、母さんだけだ…


アヌビス{…ところでさあ、サヤちゃん。

ずっと気になってたんだが、

最低って母親いるんじゃないの?}

サヤ{あの人、ほんとの最低の母親じゃないの}

アヌビス{…なに?}

サヤ{まぁ、最低にもいろいろあるの}

アヌビス{…そうか}


アヌビス「ところで、なんでサヤちゃんは八音の旋律の持ち主と知り合いなの?」

サヤ「昔私もお母さんに連れられてキャットフードに行ったのよ。そこで偶然同い年ぐらいの女の子がいて、しばらく遊んだりしたの」

アヌビス「八音の旋律を持ってるのはその子の父親か?」

サヤ「ううん、その子」

アヌビス「へえ?なんで君と同じ年くらいの子が八音の旋律の一つを持ってるんだ?」

サヤ「知らない。でもなんだかいろいろとすごい子だから、持っててもおかしくないって言うか…」

アヌビス「すごい、って?」

サヤ「説明できない。見たほうが早いわ」

アヌビス「ふーん」

サヤ「ねえ、最低、わたしたちがさ、ほんとに八音の旋律なんて代物集められると思う?」

ナオヤ「知らん」

がくっ。

サヤ「冷たいね」

ナオヤ「んなもん答えられるわけねーだろ。

もっとわかりやすい質問を心がけろ」

サヤ「ふん。最低に聞いた私がバカでした」

ナオヤ「そうだ。お前がバカだ。今更だな」

サヤ「いーーーーーーーっ!!

いちいち癪に障ることばっか………

この最低!!」

ナオヤ「それも今更だな」

そう言って、さぞかし退屈そうに、横を向く最低。

アヌビス{…変なやつら。いったいどういう関係なんだこいつら?

恋人同士にはとても見えないし、同級生か?

にしては…}

アヌビスはいろいろと思考をめぐらす。

しかし、適切な答えは出てこない。

・・・・

こういう関係と表現するのが、一番簡潔で分かりやすいだろう、そう思った。


サヤ「この森虫がいっぱいいそうだから嫌いだよ…」

ナオヤ「おまえも親の金食い虫だろうが」

サヤ「何よそれ。ちょっとうまいこと言ったとでも思ってるの?

ばかじゃない?

自分は働いてるからっていつも偉そうに…」

ナオヤ「働いてるから偉そうなんじゃねえよ。生まれつき偉そうなんだよ」

サヤ「やな奴」

ナオヤ「最低に向かってやな奴ってのは今更だな」

サヤ「…はいはい。もう相手しません」

ナオヤ「自分から相手してきたくせによく言うよ」

サヤ「いちいちむかつくなぁ」

ナオヤ「いちいちむかついてろ」


サヤ「でも、ほんと森の空気って気持ちいいね!」

ナオヤ「いやどうだろう?おれには町の空気の方があってるかも」

サヤ「最低は汚れてるしね」

ナオヤ「なんだそれは。

お前の心ほど金で荒んではいない」

サヤ「また金金言う?」

アヌビス「おまえら、仲いいのな…」

ナオヤ「仲がいいのを装ってるだけだ」

アヌビス「なんだそりゃ」

サヤ「うーん、まぁ、確かに男の子で話せるのって最低ぐらい。

まぁ、男として認識してない、ってのもあるけど」

ナオヤ「男の子で、って言うか女の子ともおまえの場合あんまり話さないだろ」

サヤ「そ、そんなことないよ!」

ナオヤ「こいつな、結構いじめられてるんだぜ。

性格曲がってるから自業自得だけどさ」

サヤ「さ、最低!い、言わなくてもいいことまで言わないの!」

アヌビス「性格曲がってる?俺はそうは思わないけどな」

サヤ「だいいち、それを言うなら最低はどうなるの?

だって昔は町中の人から煙たがられてたじゃない!

塩まかれたり、水かけて追っ払われたりとかされてたじゃない!」

アヌビス{何してたんだ…}(汗)

ナオヤ「ああ、その時はおれもバカみたいに食って掛かってたからなあ。

若気の至りだ。

それに、町中から煙たがられてるのは過去形じゃない。現在進行形だ」

サヤ「ほーら、今もそうじゃない!

ほら、人にえらそうなこと言える立場じゃないでしょ!」

ナオヤ「おれは最低です。

立場なんか何も関係ありません。

言いたいことは言います。

ちなみに、おれの言い方が偉そうに聞こえるのはきみがおれを偉いと意識しているせいだね」

サヤ「きぃぃぃぃぃぃぃ!!」

アヌビス{こいつらが仲がいい理由は、なんとなく分かった}

なんというか、その、似たもの同士ってやつだろう。

アヌビス「でもしかと食らうような要素はサヤちゃんにはないと思うんだがなあ…」

サヤ「そうよねそうよね!さすがアヌビスさんは見る目あるよ!」

ナオヤ「甘い。おまえは人を見る目がない。

こいつには一つ、重大な欠陥がある」

サヤ「こ、こら」

ナオヤ「金。

金が変わると目の色を変える。ケチとかそんなレベルじゃない守銭奴だ」

アヌビス「そ、そうなの…?」

サヤ「…」

サヤは無言で首を振って否定する。

ナオヤ「こいつのケチっぷりはすごいぞ。

ことあるごとに、金、金、金、だからな」

アヌビス「ことあるごとって?」

ナオヤ「それはもう、カツアゲじゃない。ゆすりたかりのレベルだ。

一緒に手をつないだらつないであげた代、(援交と呼ぶ)

デートでも一緒に行こうものならデート代(勘定とは別で)

とか…

請求書を送りつけてきやがるときもある。

気をつけろよ」

サヤ「…」

サヤは唇を噛みしめて怒っている。

アヌビス「そ、そうなの?

かわいいし、親切だと思うけどな」

ナオヤ「それはおまえがまがりなりにも金を持っているからさ」

アヌビス「…」

ナオヤ「ま、おまえにもそのうちわかるよ」

そう言ってアヌビスの肩を叩く。

サヤ「最低の…バカー!!

深く傷ついたわよ。慰謝料ちょうだい!」

ナオヤ「ばーか。

おれだって普段のおまえの暴言でどれだけ傷ついていることか。

そんなもので金がとれると思うなよ。

慰謝料がほしいなら目にはっきりとわかる傷を出してみな」

アヌビス「………」

なんなんだ、こいつらは。

アヌビスは自分より若い少年少女のやりとりに末恐ろしいものを感じた。



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