5章-16 自分ありき
だが、来たときと違って、宮殿行きの道は野次馬でごった返していた。
レック「動かないな…」
パギー「このままじゃ…サヤが…」
ナオヤ「えーい!」
ドアをこじ開け、ナオヤは道路のど真ん中に飛び出た。
運転手「お、おいおい!?」
ナオヤ「走ったほうが速い!」
宮殿までは、結構な距離で、そこまで人もたくさんいたが、なるべく人の居ないルートを選んで走り通した。
パギー「わたしも行く!」
パギーもその後を追う。
ぶっ倒れそうになりながら、ようやく宮殿に到着した。
宮殿の前には、一人の男が立っていた。
パディール「き、君は!」
ナオヤ「サヤはどうした!?」
パディール「多分、まだ中だ。
今、消防班が決死の捜索活動を…」
ナオヤ「なんとか火を消す方法はないのか!」
パディール「あんな量の火、とてもじゃないが…」
パギー「あるよ」
ナオヤ「パギー!
どうすればいい?」
パギー「ここは海底。
上に、海がある。
その水を使えば、消せるよ!」
ナオヤ「おまえ天才だな!
さっそく、水を下ろそうぜ!」
パディール「ダメだ!」
ナオヤ「な、何言ってやがる?」
パディール「水なんか下ろしてみろ、
町が水浸しになるぞ」
ナオヤ「だから、ちょっとだけ下ろして、
すぐ止めること、できないのか?」
パディール「市民はどう思う。
自分たちの生活が脅かされるんだぞ」
ナオヤ「だけど!
人の命がかかってるんだぞ!」
パディール「それでも市民の家は水びたしだ。
それでどれだけのヘイトが生まれるか、
想像もつかない。
ましてやこの国にやってきた地上人のために」
ナオヤ「だけどこんなところに住むことを選んだのは自分たちだろ!」
パディール「できない」
ナオヤ「なんでだよ!
お前はサヤのこと好きなんだろ!
サヤが死んでもいいのかよ!」
パディール「それとこれとは話が別だ!」
ナオヤ「別じゃねえよ!!」
ナオヤがパディールを拳で殴る。
パディール「なぜ、おまえがそこまで怒る!?
なぜ、おまえがあの女を助けようとする!?
おまえはあの女に見捨てられたんだぞ!」
ナオヤ「それがどうした!?
相手が見捨てるとか見捨てないとか、
それが人を見捨てるか、見捨てないかの理由になるのか!?」
ナオヤがつかみかかる。
ナオヤ「だいたいだ、おまえは、婚約者じゃないのかよ!!」
パディール「…」
ナオヤ「危なくなったら自分ひとりのうのうと逃げ出して、
『愛してる』って誓った相手見捨てるのかよ!!」
パディール「当然だ。
町の人に恨まれてこの町に住めなくなったらどうする!
愛なんてものはまず自分ありきでいえる言葉だ!そんなことぐらいわかれガキが!」
ナオヤ「…ああ、そうかい。
ああそうかよ!!
最後には、テメエの身のほうが大事なのか。
よくそれで、愛してるとか言えたな」
パディール「うるさい!!誰だって最後は自分が一番大事だろ!それの何が悪い!」
ナオヤ「別に、べつにお前が何を大事にしてようが知ったこっちゃねえよ…。
自分が一番大事でも…構わねえ…
ただ、ただな、結局は自分が一番大事だというくせに、他人に『愛してる』とか『誰よりも好きだ』とか!
そういう薄っぺらい言葉を軽く言ってのけられるてめえのその偽善者根性には吐き気がすんだよ!!」
ナオヤはパディールを殴り倒した。
ナオヤ「パギー!どうすれば水が開く!教えてくれ」
パギー「たぶん、宮殿の中に、スイッチがあるんじゃないかな」
目の前には、燃えさかる宮殿。
パディール「よせ、死ぬぞ」
ナオヤ「こんな炎に突っ込んだぐらいで死ぬか!!」
パギー「ナオヤ!」




