第2話 夢の内容と宝石
家に帰ると珊瑚は玄関にいたまま、魔法で荷物を置き、着替えた。「今日は入学式だから何もない良かった。にしても柘榴君ってこんな人だったかなぁ?」意識したことなかったし、話した時もただの真面目そうな生徒としか思っていなかった…でもやたらと私に相談事してたよね?あと葡萄先輩に、話しかけられた時に「いや〜先輩は鋭いですね。」なんて言ってたからもしかして…葡萄先輩は柘榴の事よく知ってるの?だとしたらそして柘榴君は鋭いって言ってたけどそういう事なのかな?…気にしすぎだよね。もう今日は勉強して寝よう。
魔法の勉強は何処かにある5教科を基本とした勉強よりは簡単らしいけどこの世界の人には魔法の勉強は大変なんだ。何より実践をしないと忘れる人も出てくるぐらい。毎日がテストみたいだよ。さっきの片付ける魔法も自力でする人もいるくらいだし…でも、私は大丈夫。何故なら、名前と特別なたった一つの魔法を受け継ぐ家柄だから…でも、何の為に?
…そして夕食だ。「いただきまーす。」私は考え事のために無言で食べるつもりだったけど、すぐ話しかけられた。「あら、珊瑚…みんなとは仲良くできそう?」みんな?翡翠以外3人ぐらいとしか話してないけど。でも、翡翠には仲良くする魔法が何かの原因で常に掛かっている。自分でかけたとか呪いとか言われてる。「うん、だって翡翠がいるもん。」私は大好物のハンバーグを小さく口に入れる。「そうだな、翡翠は仲良くする魔法が常にかかってしまっているから仲良くなれない人は居ないからな。」父も話に参加する。翡翠は知らない人と仲良くなるのでよくナンパされて私に近寄る。何で私?と聞くと守ってくれそうだからと答えられるけど何でだろう。「…でもそれでナンパされるときもあるんだって。」私は苦手なコーヒーを先に飲む。うう…やっぱり苦い。お父さんはすぐに笑っていう。「ふーん、なら珊瑚の得意な片付ける魔法でナンパする人も片付ければいいんじゃないか?」
私、人のように動くし更に自分より重い物はまだ片付けたことがない。「確かに!でも、動くものを片付ける事なんて出来たっけ?」「貴方7歳の時に猛犬元の家に帰しちゃったことあるでしょう?」お母さんはすぐ言った。でもあれは必死に唱えて居たのだ。
「あぁ!確かに!でもあの時は必死で…」というか何で家に帰せたのか不明だ。あの時は意味が分かんなくて、何故か必死で母が謝っていた。「まあ、大丈夫だろうよ。」
何となく言う。それより青玉君の盾の魔法の方が役に立つ気がするんだけど。「ご馳走さま!」
どうでもいい話を済ませて私はささっと風呂に入って自分の部屋で寝る。(2階建てのフツーの家の2階に自分の部屋と客室がある)
「お休みなさい!」「おやすみ。」二人ともそれぞれいう。
〜夢〜
学校のような部屋の人の少ないところに柘榴君と葡萄先輩がいた。「柘榴君は優しくて真面目ね。」
と優しく話しかけている先輩。私に向けたあの冷たい目と違って、優しい紫色の目だ。「葡萄先輩…それは言い過ぎですよ。」少し照れたように柘榴君は笑う。何故か私はそれを不思議に思った。「あれ、二人ともどうしたの。」何となく話しかけると葡萄先輩は少し嫌そうな顔をした。「いいえ、貴方のことについて私は知らないので私は柘榴君に聞こうとしていました。」少し冷たい目になる。柘榴君は私のそばによる。「珊瑚、待っていたよ。行こうか。」笑顔で柘榴は言う。何だか嬉しそうだ。「うん。」
私がそう言うと、「あら、珊瑚さん。柘榴君には近づかないでくださる?」と冷たい目で言った。「待ってください先輩。僕から誘ったんです。叱られるのは僕です。」と悲しそうな目で葡萄先輩を見る。葡萄先輩はその表情を変えずに「珊瑚さん、貴方脅したでしょう?」と聞いた。「どうしてまだあまり話してない人に脅せるんですか?脅しているのは先輩じゃないですか?「柘榴君、行こう。」私はまくし立てて言うと、柘榴君の手を取って走る。先輩の怖い顔が近づいてくると思ったら怖いから。「え、うん。」柘榴君は何故か嬉しそうだ。何でこんな場面で笑っていられるのかがわからない。
「珊瑚さん、私に敵うとでも?」葡萄先輩は魔法で目の前に立ちふさがる。「葡萄先輩ごめんなさい!」私はまず謝る。「へ?」葡萄先輩は呆気にとられている。
「葡萄先輩、元の場所に帰っちゃえ!」
これは片付け魔法で、元の場所とは定位置。つまり生き物や人はさっきまでいた場所、物はいつも決めている定位置。これが得意の片付け魔法。葡萄は魔法で抵抗する間も無くさっきの場所に戻っている。どうやらさっきの魔法が使えないのか呪文を数回素早く唱えてから、「珊瑚さん…こんなに魔力の強い方だとは私ですら足元に及ばないわ。やはり、私のような宝石の家系の末っ子は魔力が足りないんだわ。鍛えなくては」
「さ、柘榴君行くよ!」私はセリフを最後まで聞く気もなく廊下をただただ走る。「うん。」今度こそ二人は走って何処かへ逃げる。「下の子になるほど宝石系のみ魔力が低くなる…覚えておきなさい、珊瑚さん。」何だか辺りが眩しい…
………
「はっ!?」朝だ。まだ時間がある。着替え、朝食を食べてすぐ家を出る。「行ってきます!」多分翡翠はいつもの所にいるだろう。いつもの所は翡翠の家の前だ。すぐ向かいだけど。「あ、珊瑚!私、今日は早いよー」
いたずらっぽく笑う珊瑚の隣には、青玉と柘榴がいた。「翡翠の言う通り珊瑚もいるね、おはよう珊瑚。」「おはようみんな。」「おはよ、やっぱり翡翠はいい奴だな。すぐメール送ってくれたし。」「二人が来るなんて聞いてないよ?」
みんな歩き出す。そして珊瑚は昨日見た夢を少し思い出してつい呟く。「そう言えば…魔力は宝石の家系の上の子が一番強くて、下の子になればなるほど弱いって何だろ。」すると翡翠がすぐ答える。「あー、知ってる!長女の方が宝石の家系の血を一番受け継ぐからだって。」「じゃあ僕は少し弱いか。」柘榴は少し残念そうに言った。
「ほらほら、珊瑚が聞いてあげなよ。」青玉は空気を読んでいるのか黙って聞いている。「何で?」少し気まずそうに珊瑚は聞いた。「僕は、次男なんだ。兄さんがいて…魔夜って言うんだ。魔法の魔に夜の夜。」
青玉は首を傾げて、「別に宝石の名前じゃなければ宝石の家系の血とは言えないから柘榴は何ともないぞ?」「あ、本当だ。宝石の名前じゃなければ一般人扱いだし魔力がすごい普通の人なんじゃない?「えー!?初めて知った。」「俺も…」「そう言えばさ、みんなの家にはあるの?」「何が?」
柘榴が聞いて翡翠がすぐに答える。何より、翡翠はお喋りなのだ。もう少しで学校だ。「宝石を使う魔法。」「あるよ。」柘榴以外即答する。
「私は赤い珊瑚!」「私はエメラルド。」「俺は青い普通のサファイアだ。」「へえー、やっぱりあるんだひとつずつ。名前通り。僕はガーネット。」「ん?柘榴って何の宝石?」「珊瑚知らないの?ガーネットは和名で柘榴石って言うの。」「へー、知らなかった。」「それ言ったら僕は青玉が青玉っていう漢字意外だなって思ってた。」「それは、青玉ってサファイアの和名だからなー。」みんなでワイワイ話して靴箱で柘榴だけ別れる…と言っても向かいなので問題ない。
「ねえねえ、あれ葡萄先輩じゃない?確か葡萄先輩も宝石の名前で和名は葡萄石。」「あら、翡翠さんおはよう。よく知っているわね。」「ええ、父がラグジュアリーのブランドを経営しているんです。」「そう言えば言い忘れていたけど、葡萄先輩は実は僕の従姉なんだ。」「へえー、てことはお姉さん?」
翡翠は言う。珊瑚は夢のことがあってか無言でいる。「ええ、私は柘榴君の従姉です。」「さ、もうそろそろ行かないとチャイムが鳴るぜ。」青玉がもう話に飽きたと言わんばかりに言う。ここは玄関前の廊下なので人の邪魔だ、配慮したのかもしれない。「わかった、では先輩また。」「話に付き合わせてすみません。」ようやく珊瑚も話す。「ええ。」
4人で階段を上る。「夢の中に葡萄先輩が出てきたものだから怖かった。交流会の時みたいな冷たい目するの。」柘榴はそれを聞いて何か思い出して言う。「ああ、それは僕に話しかける女子をすぐ追い払う葡萄先輩の悪い癖。心配しているんだろうけど別に僕はもう高校生なんだし、変だよね。」「うん、絶対おかしい。まるで柘榴君のこと先輩が好きみたい。」私は最後の自分の言葉に不安を覚えた、何故だかわからないけど、怖くて。「…え!?な、何を言ってるんだ珊瑚。僕は珊瑚の方がいいかな…なんて。」僕はの後から柘榴は下を向いて恥ずかしそうに言った。だけど、その声は考え事をしている珊瑚には聞こえなかった。
「柘榴君、最後の方が聞こえないよ?」少し顔を近づけてさっきの小さい言葉を聞こうとする。「珊瑚、聞こえなかったなんて残念ね。」翡翠はニヤニヤして言う。「俺も聞こえてないけど、お約束なんじゃないかな?」青玉も理解してニヤニヤする。「えー、翡翠勿体ぶらないで教えてよ!」両手を拳にしてブンブン腕を曲げながら振る。魔法だったら小さな岩がたくさん飛んでくる石つぶての魔法になる。「やーよ。」翡翠は笑ったままの顔で呆れた時のポーズをする。「もう、じゃあ言わないでよ。あ、そうだ柘榴君なんて言ったの?」珊瑚はそうだ、と柘榴に聞いた。「内緒。」笑顔で言うので余計気になる珊瑚。「えー…ちょっとがっかり。」肩をガックリと落とした。
「またいつかはっきり言うよ。」意味ありげにウインクする。何故かウインクは決まっている…
そう珊瑚は思った。「何だか何もしなくても上手くいきそうな二人だな。」「私は両方の友達として心配なので見守りまーす。」この二人の会話は本人達に丸聞こえだ。「だから翡翠、違うの…私そう言う意味で聞いたんじゃないよー。」必死に否定する珊瑚。「僕は珊瑚のこと諦めないからね?」やはり笑って言う。そのせいで珊瑚は余計意識してしまう。「えっ!」「…やっぱり嘘。」「あ、う…嘘なんだ。」「珊瑚、振り回されてるよ。」さっきの発言に動揺しているのを見た翡翠はからかい始める。
「…」
珊瑚は下を向いて教室へ入った。柘榴は手を振っているのに。翡翠が代わりに手を振って青玉もじゃあな!と柘榴に言う。これから1-1の初授業が始まる…