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第4章 風

ヒロと過ごした 小学校の6年間は

長いような…

短いような…

そんな 6年だったけど 結論から言うと 楽しい 6年だった…。


僕たちは 中学に入学すると 直ぐに 大きな壁にぶつかる事になった。

入学した中学に 陸上部がなかったからだ…

僕たちは 担任の先生を通して 陸上部の創部を 何度もお願いした…


…が


認められる事は なかった。


同好会としてすら 認められなかった 陸上部は ヒロと僕だけの “自称 陸上部”として 活動を始めた。


他の部の邪魔にならないように グランドの隅で 僕たちは 一生懸命に走った…



放課後

いつものように 教室で 体操服に着替え グランドに出た。


ヒロと二人で 準備体操をしていると 翔太が 体操服姿で

『僕 走るの遅いけど 一緒に走っていい?』

と 遠慮気味で話しかけてきた


『ん……』(沈黙)


僕とヒロは 顔を見合わせると ヒロが


『もちろん 大歓迎だよ…』


『これで 陸上部は 3人になったね!』

『頑張ろうね!』

…と ヒロは 少し興奮ぎみで 喜んだ。


僕たち 3人の練習風景は 僕の後ろを 大差でヒロが走り

また さらに 大差で 翔太が 必死に追いかけてくる…


そんな 力の差の大きい 3人だったけど

3人とも 一生懸命で 力を抜くことなく 頑張った。

3人だけの陸上部は 常に 周りから 冷たい目で見られ


『アイツ! 走ってんのか? 歩いてんのか?』

『学校で 一番 足の遅い奴が 陸上部…?』

『バッカじゃねぇ…』

翔太を抽象する声に


ヒロが

『言わせておけばいいよ』

『好きな事を 一生懸命に 頑張ってる 翔太は カッコいいよ!』

と 励ますような 日々が 続いた…


僕たちは 夏も 秋も 冬も 休む事なく 頑張った。


2年生になった 僕たちは 変わる事なく 頑張った。


次第に 周りからも 『頑張れよ!』と 声が かかる事が 多くなった。


そして 特に 変わった事もなく 時は流れた…


僕たちは 3年生になり

体育の授業で 100メートル走の記録を計った。

そこで 僕の出した 11秒2の記録が 先生の間で 話題となり



6月……


陸上部は 誕生した。



僕は その時の事は 嬉しさのあまり 何も覚えていない…。



急きょ 募集した部員は 1年生 3人。 2年生 2人。 みんな男子で 僕たちを含む 8人で スタートした。


僕たち3年生は 7月15日の市の大会で負ければ 中学生活で 最初で最後の大会だと 知らされた。

勝てば 県大会に出場出来るけど 初めての僕たちには 先の事は 考えずに 練習を続けた。


市の大会へは

結局 僕と ヒロと 翔太の3人だけが 100メートルに出場する事になった。

翔太は 『僕は 足が遅いから 出たくない』と言ったけど

ヒロの

『本物の 陸上競技場で 走らせてもらおう。』

『自分も 速くは ないけど 陸上競技場で走りたいから 一緒に頑張ろう』

と 言う言葉で

翔太は 不安な気持ちを抑えて 出場を決意した。


7月12日…

呆気なく その日は やってきた。


夕方6時。


《プルルル プルルル》


ヒロのお母さんからの電話に出ると

元気のない 細く悲しい涙声で

ヒロが…

ヒロが…

じ…こ……

上手く会話にならない ヒロのお母さんの 電話を切ると 僕は ヒロの居る 病院へ向かった。


ヒロは 夕方 “ちょっと走ってくる”と言って 家を出ると 交差点で 信号無視した 車に跳ねられたと言う事だった。

病院に着くと 意識がなく 機会に囲まれて ベッドに寝ていた。


僕は ヒロの手を握り ただ 祈った…


ヒロの居ない人生なんて あり得ないから…




どのくらいの時間が過ぎたのだろう…


『ご・め・ん・ね…』


ヒロが意識を取り戻した。

ちからの無い声で 必死に何かを 言おとしていた。

『ヒロ!』


『た・く・ちゃ・ん… ご・め・ん』

『オ・レ… ダ・メ・か・も…』

『し・あ・い… 出たかったなぁ…』


『何 言ってんだ! 助かるよ! 頑張れ!』

『う・・・ん・・』


『たく…ちゃ・ん』

『オレ…が・ し・ん…だ・ら』

『た・く・ちゃん・の… つら・い・とき…』

『か・ぜ・に… なって 背・なか・お・し・て… あげ・るね…』



『馬鹿やろう!』

『頑張れ…』




僕の声は 虚しく


ヒロは 安らかに眠り 帰らぬ人になった。


僕は それを どうしても 受け入れる事は 出来なかった。

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