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第3章 努力


ヒロが涙した運動会以来

ヒロは 夜の練習(特訓)とは別に 朝も走り始めた。


直ぐに結果が出る事は なかったけど

6年生になったくらいから 背も伸び始めて

体形も デブと言うよりは 普通に マッチョっぽい感じになってきた。


ビリ脱出は 時間の問題だった…


6年生の1学期


体育の授業で 50メートル走があった。


ヒロの順番がくると

ヒロを含む 4人が スタートした。

出遅れる事なく 混戦で ゴールに雪崩れ込んだ…

結果は 4人中 2位!!


『ヤッター!』

『すごい!! すごい!!』

ヒロは 興奮して 飛び跳ねる…

喜ぶ その姿は 小さな子供そのもので

『勝ったの 初めてよ』

『勝ったの 初めてよ』と言っては 手当たり次第に 回りの友達に握手を求めた。

そんな ヒロの姿は 幸せそうだった。


その後も

『嬉しいなぁ…』

『気持ち良かったな…』


ヒロの 初勝利の興奮は 1日中 終わることは なかった…


そして… 夏休みも終わり。

2学期が始まると 小学校生活 最後の運動会の練習が始まった。

80メートル走の練習になると ヒロは いきいきとした顔で スタートラインについた。

スタートすると 今までの ヒロとは違い 力強く 先頭争いをして 2位でゴールした。

その後も 次々に ゴールしていく クラスメイト…


そんな中 1人の子が 集団から 取り残され ゴールした


同じクラスの 田中翔太だ


授業が終わり 教室に戻ると ヒロは 翔太に話しかけた

『翔くん 放課後 一緒に走る練習しない?』翔太は 少し困った顔で

『僕は 走るの嫌いだから やめとく…』と 断ると

『ダメ! ダメ!』

『今日だけは 約束!』

と言って 立ち去る。



放課後

ヒロは 嫌がる 翔太を無理やり グランドへ連れていくと

授業で走った スタートラインに 一緒に並んだ…

『たくちゃんは 悪いけど 横で見てて』と言うと



《ハイ!》

のかけ声で 翔太をスタートさせた

スタートした 翔太の後ろを

《もっと 腕振って…》

《もっと 腕振って…》

と声をかけて 翔太の後ろをついて走る。

翔太が ゴールに近づくと

《ラスト! ラスト!》

と 声をかけ続け ゴールした。


ヒロが 翔太に近づくと

《お前 バカか?》

《なんで 本気で走らんの?》

《体育の時だって 本気出してなかったし》

《なんでなん?》

と ヒロが激怒すると


《ほっといて》

《どうせ 走るの遅いし 関係ないじゃろ》

《お節介なんよ》

と言うと 翔太は 帰ろうとした。

ヒロは 帰ろうとする 翔太の腕を掴むと

《運動会の時も 本気で走らんの?》

《そんな 翔くんでも 親は 必死で応援するんよ!》

《いいから あと一本 付き合って…》と言って スタートラインに立たせた。



嫌がる翔太に 《ハイ!》…と声をかけると

ヒロは 翔太の背中を 軽く押し

翔太は スタートした


翔太が スタートすると その後ろを走るヒロが そおっと 走る翔太の背中に 手を伸ばす


ヒロは そのまま 翔太の背中を押すと

押し続けたまま ゴールまで 走り抜けた。


『どうだった?』

『 背中押したら 少し 速く走れたじゃろ…』

『何でも 一生懸命に頑張れば 実際に 背中押して貰えなくても 応援してくれる人の 気持ちが 背中を押してくれるから 頑張ろうよ』と ヒロは 熱く語った。


翔太は 何も話す事なく 帰ってしまった。


僕とヒロは 重い空気のまま 下校した…


下校途中…

『なんか さみしいね…』

『翔くんも 何か好きな事 あるはずなのに…』


『うん…』


ヒロは 自分の事のように 悩んでいた。


『う〜ん…』

ヒロは 独り物思いにふける…


すると ヒロは


『努力は 結果を求めことじゃなくて 自分の力を 100%出し切る 練習だと思うんだけどね…』と 小さく呟いた…

結局 それ以来 翔太と練習することなく 運動会 当日となった。


6年生 最後の運動会も 天気に恵まれた 最高のコンディションで 順調に プログラムは進み


いよいよ 6年生の80メートル走の番がきた…

グランドを半周するコースで 僕たちは 6例に並んで スタート地点に 整列した。


翔太は 2例目

ヒロは 10例目

僕は 最後に走る…


1例目がスタートすると 直ぐに 翔太たちの例が スタートラインについた。


スタートのピストルを鳴らす先生が 1例目がゴールするのを確認すると 2例目のピストルが鳴った…


《パーン》


翔太は スタートこそ 少し出遅れたけど 最後尾で 必死に食らい付いていく…


結局 ビリだったけど 大きな差はつかず ゴールした。


例は 進み ヒロが スタートラインに着くと


《パーン!》のピストル音!


ヒロは スタートから 先頭に立つと 3人で 1位争いをしながら 横1列で ゴールした?


結果は 1位だった…


ヒロは 僕の方を見ると 目が合うのを確認して 大きく ‘ガッツポーズ’した。

僕も 1位でゴールして 最後の80メートル走は 無事終了した。


グランドを出た ヒロは 翔太を探して 歩み寄ると


『頑張ったね! カッコ良かったよ!』と言って 翔太の肩を叩いた。

『ビリだけどね…』と翔太は 恥ずかしそうに言う。

『結果じゃないよ』

『すごかったよ』

と 嬉しそうな顔で喜んだ…


『ヒロくんのおかげで 楽しかったよ』

『ありがとう』

と 翔太が ヒロに声をかけると 走って 何処かへ行った。


『1位 おめでとう!』

僕の声に ヒロがびっくりして振り向いた。

『そうだった… 1位よね…』

『凄いよね…』

ヒロは 他人事のように 反応が薄かった。


たぶん ヒロの中では 自分が1位になった事より 翔太の走りに 感動して 頭が いっぱいになったんだろうと思った。


結局 僕たちの 小学校生活は “終わり良し”で 終わった…

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