第1章
ついに その時が…
ヒロとの約束 自分の夢…
男子100メートル決勝
このレースに勝ち 高校チャンピオンになる事が ヒロと誓った夢…
今 それが現実になろうとしている。
ヒロは 中学3年の夏 突然 この世を去った…
レースを目前にして ヒロと過ごした時間が 頭の中を駆けめぐる…
ヒロとは 幼なじみで いつでも一緒だった…
ヒロは 肥満体形で 勉強も運動も苦手で 友達からは 『トン太』と あだ名されていた。
見た目には 明るく 悩み事などなく見えるけど 人一倍 気を使うタイプで
『朝夕のジョギング…』
『勉強の予習、復習』は 必ず欠かさない努力家で 口癖が
“人の何倍も頑張らないと 勉強も運動も 笑って言えるビリをキープ出来ないからね”…と 足を引っ張る事を 誰よりも 気にしていた。
そんなヒロの 大好きな遊びが 『かけっこ』で
いつも“勝負しよう”
と言っては かけっこした。
…ある日 僕は 「なんで 走るの好きなん?」って聞くと ヒロは 少し恥ずかしそうに 「人と比較すると 走る遅いけど ゴールした時の達成感かな…」
「みんな 同じ所からスタートして 同じ所へゴールする。」
「そんな 分かりやすい所が好きかな…」
ヒロは 楽しそう答えた。
やがて かけっこは 成長と共に
“かけっこ→徒競走→陸上競技”へと 出世魚のように 呼び名を変えた。
どんなに敗け続けても
“好きなモノは好き”
ヒロの気持ちが変わる事はなかった。