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秘密基地 ①

今日は土曜日。

あの中央公園での事件から五日が経ち、琴鼓達はララとの約束を果たすために、名刺に書かれていた日本事務所へ向った。

白川グループ皐月専用ヘリのおかげもあって10分程度で到着したものの、辿り着いた3人の目の前には事務所と言うにはだいぶ無理がある豪邸がそびえ立っていた。


「え~・・・。」


想像とは桁違いの建物を目の前に華凛は思わず嫌そうな声を出す。


「こ、ここでいいのかな?」


目の前の豪邸が信じられず、琴鼓は何度も名刺と豪邸を見比べている。


「わーおっきいー。」


皐月が目一杯上を見上げる。


「皐月はのん気だな。まぁあんたならこのくらいはビビらないか。」


華凛が苦笑いする。


「うあ!」


突然、琴鼓が声を上げると、華凛は驚き飛び上がる。


「なに!?なによ!?」

「見て!ここに此ノ花って書いてあるよ!やっぱりララさんの事務所なんだ~・・・さすがお姫様!」


琴鼓が興奮した顔で名刺を表札の横に並べ見比べている。


「あんたね・・・。」


華凛が大きく溜息をついたところ今度は皐月が「あ!」と声を上げる。


「え?なに?今度はなによ!?」


華凛は皐月が見上げる視線を追う。

建物の3階。

空いている窓から覗く大きな瞳の女性が見える。


「わぁー琴鼓さぁぁん!」


その声に琴鼓は驚き見上ると、そこには窓から身を乗り出し、満面の笑顔で手を振るララの姿があった。


「来てくれたのですか!今そちらへ向いますぅ!」


ララの顔が見えなくなると、琴鼓は勢い良く二人の方へ振り向く。


「ララさんだ!やっぱりここだったんだね!」


それから10分くらいだろうか、メイド達を引き連れたララが勢い良く玄関から飛び出してきた。


「お客様です。お荷物をお持ちなさい。」


ララが毅然とした態度で言い付るが、メイド達はオロオロと戸惑っている。

見兼ねた華凛が口を開く。


「あのさ。荷物無いけど?」

「え?あ・・・えっと・・・。」


顔を真っ赤にして慌てるララ。


「お、お部屋へお通しして下さい。私も後から参ります。」


そう言うとララはそそくさ建物へと入っていった。


「ありゃダメだね。」


華凛が肩をすくめると、琴鼓と皐月は顔を見合わせ苦笑いした。

だが、さすがに入り口から部屋までの道のりは見事なものだった。

広々とした玄関のど真ん中に設置されている初代獣人王のモニュメント。

その真上には細か過ぎる細工のシャンデリアがぶら下がっている。

床には玄関から部屋まで敷かれた赤い絨毯。

廊下に並ぶ確実に高価であろう骨董品の数々。

皐月の別荘で慣れているとはいえ、琴鼓と華凛の口は部屋に着くまで開いたままだった。

三人が通された部屋はやはり事務所のそれとは程遠い客室。

そこに置かれた豪華な椅子に圧倒された三人は座れず、部屋のドア付近に固まっていた。


「んとさ・・・。」


華凛が口を開いた。


「座らない?」


華凛の問い掛けに皐月がコクリと頷く。


「か、華凛ちゃん先にどうぞ。」


琴鼓は席を譲る様に後ろへ下がる。


「うん?う、うん・・・まぁ座ろうか?」


華凛が大きく息を吸い込んだ次の瞬間、背後で廊下を慌しく走る音が一気に近づいてきた。

三人は慌てて椅子の近くまで駆け寄る。

結局どこに座るか目配せするがまとまらず、結局、大きな3人がけのソファーの後ろに棒立ちしながら身構えた。

三人が息を整える間も無く足音は部屋のドア前で止まると、三人より息を切らしたララが額に汗を浮かべ勢い良くドアを開けて入ってきた。


「す、すいません。部屋間違えました。」


ララは頬を赤らめ恥ずかしそうに言った。



ソファーに座った三人の目の前の机に、次から次へと見たことのないスイーツが並べられ、レバンが、良い香りのする紅茶を注ぐと三人は堪らず手を伸ばした。


「まさかこんなに早く琴鼓さんから来ていただけるとは思いませんでした。早速、お約束の全てをお話致します。」

「あのさ。先に良いかな?」


華凛がララの話に割ってはいる。


「え・・・な、なんでしょうか・・・?」


ララがビクつく。

ズバズバ物を言う華凛の事がそうとうトラウマになっているようだ。


「ちょっと・・・そんなに怯えないでよ・・・。別にもうどうこう言わないわよ。」


華凛が苦笑いする。


「お、怯えている訳じゃ・・・ないです。」


ララは変に口を尖らせチラチラと華凛を見ては目を逸らしている。


「・・・まぁいいけど。とりあえず琴鼓のやる気は汲んであげようと思う。皐月もあんたの言う事聞くって言うしさ。ただ、アタシはあんたのこと、まだ信用出来ない。だから、琴鼓と皐月の保護者として、アタシもあんたのチームにはいるよ。」


そう言うと華凛は、勢い良くララを指差した。


「へ?」


とララ。


「えええ!?」


琴鼓が絵に描いたようにぶったまげた。

皐月は微笑みながらうんうんと頷く。


「あ、でもあたしはあくまで保護者ね。ロボットとか訳わかんないし興味ないから。とりあえず、それが琴鼓と皐月があんたのチームに入る条件だから。」


華凛のモンスターペアレンツばりの言い分にララは頷くしかなかった。


「そ、それでは、まず私の事をお話します。私の本名はララルティエ・ユランディル。アースクリエイティブ社社長ユリシス・ユランディルの長女です。父ユリシスは地球移民後3代目獣人王であり、娘である私はプリンセスです。」


自らプリンセスと名乗れる人物を目の前にする事はそうそう無いだろう。

どうして良いかわからず琴鼓は小声で「ご機嫌麗しゅう」と言いながら頭を下げる。


「最初にお会いした時、皆さんには、私のアースクリエイティブ社へ対する気持ちをお話しましたね。あの話は本気です。」


ララの言葉に華凛が何か言おうと息を吸い込む。

それを察したララが右手を軽く挙げ待つように促した。


「私は父に話ました。素材独占のこと、AI優先による操縦者の心の欠乏、それに彼の事も・・・。」


獣人王の反応が気になる3人はゴクリと唾を飲み込んだ。


「私の話を真剣に聞いていた父は、聞き終わるまで無言でした。すべての気持ちをぶつけた私を見て、父は立ち上がり私の両肩を掴み、そして―。」


3人の喉がさらに鳴る。


「こう言いました。『さすがは我が娘だ。お前の願いを叶えよう。ただし、チャンスは一度きりだ。願いは自らの力で勝ち取ってみせよ!お前はお前の力で大会を勝ち上り、優勝して我を超えて行くのだ!』・・・父は、10年に一度行なわれる団体戦で勝負すると仰られました。父の率いるアースクリエイティブ社所属チームを全て倒し、優勝すれば私の願いを全て叶えると。その代わり、勝てなかった場合は一生どのロボット大会に参加することも出来なくし、私の願いは叶えられない・・・と。」


ララはそう言うと俯いた。


「ゆ、優勝って・・・マジ言ってんの?勝てると思う?」


華凛が吐き捨てる様に言った。


「団体戦に参加するにはまず全ての部門で5位以内に入らなきゃダメです。前大会で実績があれば参加資格を貰えますが、新規チームでは無理ですね。」


皐月が淡々と答える。


「そうなんだ・・・。」


さすがの琴鼓も暗い顔をしている。


「皆さん。確かに私欲かも知れません。でも、大会で勝ちたいと言う気持ちは琴鼓さん自らが持っているはずです。私は、その力になれます。きっかけが違っていても目指す物が一緒なら共に戦えると思います。」


ララの熱い問い掛けに3人は無言だった。

その様子にララもまた俯いてしまう。


「負けたら一生ロボット大会には出れないだよね・・・。」


琴鼓が呟く。


「はい・・・。」


ララが答える。


「私、やる。」


即答。

その短い決意に他の3人が顔を上げた。


「琴鼓!無理に決まってるじゃん!あんた、1回戦も勝てないのに優勝なんて口が裂けても言えないでしょ!」


華凛が詰め寄る。


「言える!言えるもん!」

「口先だけならね!負けたら一生出来なくなるんだよ?あんた・・・それで良いの?」


華凛は伏し目がちに言う。

皐月も心配そうに琴鼓を見詰める。


「華凛ちゃん・・・私は諦めないよ。約束だもん。それに、今の私は華凛ちゃんの言う通り1回戦も勝てない。でも、ララさんや皐月ちゃんや華凛ちゃんが力貸してくれたら、きっと・・・絶対勝てるようになる!皆がいてくれる今がチャンスなんだよ!」


琴鼓は華凛の手を強く握る。


「琴鼓・・・。」


華凛は琴鼓の顔を見詰める。


「わ、私は、お金も技術もたくさん有ります!」


様子を潤んだ瞳で見詰めていたララが唐突に声を張り上げた。


「ぷっ・・・はは、あんた、その言い方、金持ちの自慢?」


ララの言葉に華凛が思わず吹き出した。


「え!?あ・・・あの・・・だから・・・。」


ララがモジモジする。


「わかったわかった。あんたが全面サポートしてくれるわけね。あーもう!やるからにはアタシがしっかり見張るからね!手抜きしたら承知しないよ!」

「華凛ちゃん・・・。」


琴鼓が目を潤ませ華凛を見詰める。


「やるからにはマジだよね?」


華凛は真っ直ぐ琴鼓の目を見詰める。


「私は、がんばるよ。」


琴鼓は大きく頷いた。


「私も琴鼓ちゃんと一緒に頑張ります。」


皐月が琴鼓の手を握った。


「皐月ちゃん!」


琴鼓は笑みを返した。


「あ、あの!私も―。」


輪に入ろうとララが立ち上がったその時いきなりドーンという轟音と共に部屋がグラグラと揺れる。


「きゃー!」


琴鼓が叫ぶ。


「じ、地震!?」


華凛は立ち上がると周りに危険が無いか見渡す。


「びっくりしたね。」


皐月は何故かセッセと余ったクッキーをハンカチへ包んでいる。

持って逃げるつもりの様だ。


「はぁ・・・またですか・・・。」


ララは事情を知っている様で呆れた感じに溜息をついた。


「またって何?」


華凛が問い詰める。


「ちょうどいいですね。皆さんにもご紹介します。ついてきてください。」


ララは立ち上がり、「まったく、いつもいつも」となにやら小声でブツブツ言いながら部屋を出て行った。


「え、どういう事?」


混乱する琴鼓を連れて3人はララの後を追った。

読んでいただき有難うございます。

次話も見掛けたら読んでいただけたら幸いです。


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