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黄金の羽 ②

「さぁ皆様大変長らくお待たせいたしました!清掃作業も終わり、いよいよ待ちに待ったあの人の出番です!それではまずは選手紹介と参りましょう!」


観客は待たされた分、一段と大きな歓声を上げた。

ところが、最初にメイン画面に映しだれたのはマッチョなレスラーをイメージとしたロボットが両手両肩にバズーカーを装備している姿だった。

観客はがっかりとした声をあげる。


「エントリーナンバー414。アンドレ・ザ・ゴメス選手と『ダイナミックボンバー』!今回初参戦のこの男。20歳から35歳までプロレスラーとして活躍。引退後、ロボット乗りに転身し、たった一年で大会に参戦という無謀なチャレンジャー!さぁ、なぜプロレスラーだったのにバトル部門じゃなくシューティングなのか、なぜ、初参戦なのに対戦相手があの人なのか!」


完全に咬ませ犬的な紹介の次は、いよいよラナンの出番だ。

甲斐が喋り出す前に期待で観客達がざわめき始めた。


「それでは・・・皆さん。」


たっぷりと間を取る。


「エントリーナンバー1・・・ラナン・キュラス選手と『エルドール』です!」


メイン画面には、明らかに普段無い特設カメラアングルで映し出されたエルドールが真っ白なマントを靡かせている。

会場には割れんばかりの大歓声が鳴り響いた。

その姿は白を主体とし赤をアクセントに加えた色彩だ。

全長は低く、スマートとは言えないずんぐりした機体だ。

両足は、膝下から大きく広がり、大き目の足が重心の良さを想像させる。

一見、背が高めの装甲車にも見えなくも無い。

頭部は胴体と一体で首が無い。

首が無い代わりというのか一本の角が頭部辺りから後ろへ伸びている。

他に比べてスラッと伸びた腕は少々アンバランスに感じる。

その両手にはすでにスナイパーライフルを持っていた。


「彼こそキングオブシューティング!今年21歳になったばかりの王者は、今後どれだけ成長し、どれだけ王座に君臨し続けるのでしょうか!10年、いや、20年、永遠に続くとも思わざるを得ないのは、彼のその技術が実証しております!スナイパーライフルの連射が出来るのは世界でも彼しかいないでしょう!しかも、その精度はまさに神業。長距離から次々に的を打ち抜く彼に太刀打ち出来る人間はいるのでしょうか!?おおっと!そろそろ開始の時間の様です!さぁさぁ!それでは、まずはステージセレクト!」


メイン画面にステージセレクトが表示され、ルーレットが回り始める。

そして立体映像の銃が現れるとメイン画面を打ち抜いた。


「ステージは・・・密林の古代遺跡!」


特設ステージがザワザワ波打ち始める。

次々に熱帯雨林の植物が生えていく。

蔦が地を這い樹の幹が、地面を埋めていく。

ジメッとした空気が観客席へ流れ込んできた。


「まったく・・・私向きじゃないね。」


ラナンが大きく溜息をついた。

最期に、密林の中心が大きく変化し巨大な古代遺跡が出現した。

大きな顔面石造が入り口を守っている。


「ラナン。密林は見通しが悪いよ。まずはあの遺跡に向おう。」


通信モニターに桔梗が映る。


「ふむ、そうだな。まずは様子見か。的は密林内に出現する可能性もあるだろう。桔梗策的を頼むぞ。」

「もちろん。発見した的はどんどんそっちに転送するから休まず働いて。」


桔梗が微笑む。


「桔梗。お前はまるで妻だな。そして、私は恐妻家の様だ。」


そういうとラナンも微笑み返した。

桔梗が通信で話しているのは、応接セットで観戦している皆のすぐ隣にある。

当然、会話は筒抜けだ。

二人のやり取りを聞いていた華凛が我慢出来ず叫ぶ。


「気持ち悪!」



そんなやり取りが行なわれているとは露知らず、対戦相手のアンドレ選手は苛立っていた。


「どいつもこいつも・・・あのくそ野郎のどこが良いんだ。俺だって・・・俺だって。頑張ってんだぞぉぉぉ!」


苛立ちが思わず涙となって流れ落ちた。


「ロボット作るのに全財産使ったんだ!夢だったんだよ・・・レスラーだって好きだったけど、お金貯めてロボット作ってシューティング部門に出るのが子供の頃からの夢だったんだ!あんな女たらしに負ける訳にはいかないんだ!」


涙が怒りで蒸発していく。


「ぶっ潰してやる・・・!」


アンドレ選手の目に炎が宿った。



「さぁ!いよいよ。スタートです!」


甲斐の言葉と同時にカウントダウンが始まる。選手も観客も口を真一文字に結ぶと少し前のめりになる。


「第五回戦スタート!」


ドッと観客が沸くとスタートの合図がかき消させれた。

先行したのは、なんとアンドレ選手だった。

ダイナミックボンバーの両足はホバーになっていて、歩行タイプのエルドールを一気に置き去りに出来たのだ。


「はーはっはぁ!ざまぁみやがれ!先攻はもらった!」


アンドレが興奮してつばを飛ばす。


「アンドレ選手。一気にラナン選手を引き離したー!目指すのはやはり中央の古代遺跡のようです。おそらくは、両選手ともに視界の狭い密林を避けるつもりのでしょう!さぁ、解説のテリーヌ・セルセーヌさん。やはり、ここは古代遺跡がポイントとなりそうですが。」


甲斐の隣には、本日の解説に呼ばれたシューティング部門第40回5位ボリス・セルセーヌの妻テリーヌ・セルセーヌが仏頂面で座っていた。


「え?だから、私、主人の代理ですのよ?解る訳ないでしょう?こんなの見易いのが良いに決まってるじゃないの。」


何故妻なのか。

甲斐の心の叫びが聴こえてきそうだ。


「なるほど。ですが、的はどこに出現するか解りません!密林に出現した場合には索敵が重要になるでしょう。長期戦となる可能性もありそうですね。」


一方、ラナンは密林を走っていた。


「全く・・・私向きじゃない。」


額の汗を拭うと冷房を強にした。


「あ・・・ラナン!無駄にエネルギー使わないでよ?古代遺跡を制圧した後は密林で長期戦になるかも知れないんだから。」


そう良いながら索敵を続けている桔梗は通信モニターを見ていない。


「・・・お前はホントに口煩い・・・。」


しぶしぶ冷房を弱にした。


「僕は、君のサポートじゃないパートナーだよ。戦いに不利になるような事はさせないからね。」


チラッとモニター越しにラナンを見ると微笑んだ。

その時、ついに的の出現枚数がカウントし始めた。


「おおっと!的が出現!さぁどこだぁぁ!?」


甲斐が興奮して立ち上がる。

メイン画面が色々な場所を次々映し始める。

パッと止まるとそこは的が大量に並んでいた。


「これは・・・どこでしょうか・・・大量の的が所狭しと並んでおります!部屋・・・?これは、遺跡の一部!遺跡にあるどこかの部屋のようです!」


そして、メイン画面には遺跡へ数メートルまで迫ったダイナミックボンバーの姿が映った。


「アンドレ選手です!先に着いたのは、やはり先行を取ったアンドレ選手です!しかし、ホバーといっても良くこの短時間で密林を抜けれましたね。テリーヌさん。」


淡い期待を込めて、もう一度テリーヌへ話しかける。


「え?知らないわよ!あれでしょ・・・んー・・・ホバーなんだから川とか通ったんじゃないの?」


意外と適格な答えが出てきて甲斐は一瞬言葉に詰まる。


「・・・ああ!テリーヌさん!そうですね!なるほど!ここ、見てください!」


甲斐が小型モニターを指差す。

そこにはスタート地点近くから古代遺跡まで続いている川が映っている。


「テリーヌさんさすがですね!」


甲斐の言葉にまんざらでも無さそうにテリーヌは顔を赤らめている。


「ラナン!相手が遺跡に着いたよ。もっと急がないと!どうやらポイントが集中して出現しているみたいなんだ。このまま先越されたら大量得点を取られちゃうよ!」


桔梗が索敵を続けながら声を荒げる。


「まぁ落ち着け桔梗。私はトレジャーハンターじゃない。宝探しはマッスルな彼に任せようじゃないか。それに、こういうステージは私向きじゃないんだよ。」


ラナンが優々と答える。


「ラナンさん大丈夫なのかな?」


特等席で観戦している琴鼓達が心配そうに大型テレビを見詰めている。


「大丈夫だよ。琴鼓ちゃん。アニキはいつもこんな感じだからさ。」


パイプ椅子にあぐらで座るホップが答える。


「ホップ・・・さんは、ラナンさんの弟さんなんですか?」


皐月は年下に見えるホップをどう呼んで良いのか迷っている様だ。


「え?あははは~。アニキと僕似てる?」


悪戯っ子の様な笑顔を見せる。


「あ、いえ。アニキって呼んでいるので。それに、ホップさんは私達より年下な気がします。ラナンさんが21歳ならずいぶんと歳が離れているな~って思いました。」


皐月らしい淡々とした言い方だ。


「なるほど~。皐月ちゃんは面白いねぇ。僕は今年で15だよ。アニキって言うのは兄弟の兄貴じゃなくて兄貴分のアニキって事ね。」


パイプ椅子をギシギシ揺らしながら答える。


「一つ違いなんだ!てっきりもっと下だと思ってたよ!」


琴鼓が目を丸くしている。


「それじゃ皆は16?えっと・・・そっちの・・・彼女も?」


目を丸くしているのはホップも同じで、ヒスイを指差している。


「・・・!?アタシは19!」


ヒスイが思わず声を荒げると、ホップはパイプ椅子から落ちそうになりバタバタした。

その声に、驚いていた人物がもう一人。


「お、俺と同い年なのか・・・・。」


今までホップの隣で腕を組んだまま黙って座っていた牡丹が呟いた。


「ラナン!」


突然桔梗が声を張り上げる。

試合から気が逸れていた全員が慌ててテレビを見詰める。

そこには、やっとの事で遺跡にたどり着いたエルドールの前で、4つのバズーカを無差別に撃ちまくるダイナミックボンバーの姿だった。

ダイナミックボンバーのポイントが急上昇していく。


「アンドレ選手!遺跡を出現した的ごとどんどん破壊していきます!あの宝部屋を見つけるつもりなのでしょう!いゃ~しかし、最近何かと破壊する選手が増えてきましたねぇ。」


おそらくはヒスイと対戦したアイリン選手の事だろう。


「どこだぁ!あの的は全部頂く!・・・ん?ちっ、もう着やがったのか!」


アンドレ選手の目に悠然と入り口へ向うエルドールが映る。


「なぁ桔梗。あの部屋はどのへんだと思う?」


破壊を繰り返すアンドレをガン無視でラナンは遺跡の入り口を守る顔面巨石を見上げた。


「う~ん・・・ボクは正直あの大きさの部屋がこのへん遺跡にあるとは思えないんだ。」


桔梗が腕組みする。

遺跡は確かに大きい。

だが、入り口付近の遺跡は朽ち果て屋根が崩れ落ち見渡す限りそんな部屋は無かった。


「あるとすると、地下に何かあるのか・・・。まぁ一番怪しいのはあの塔だろうね。」


桔梗がモニターに映像を飛ばす。

遺跡中央にそびえる塔。

他と同様に朽ち果ててはいるが2階部分まで残っている。


「彼は、気付いていないのか。」

「みたいだね。どうする?」

「出現枚数はまだ100程度。ほぼあの部屋か。ふむ、とりあえずこの音。うるさいな。」


無差別に遺跡にバズーカを撃ち込む音が耳障りだった。

ラナンの目に力が宿る。


「さぁさぁ!これは大変な事になってまいりました!現在の得点は、アンドレ選撃破枚数49枚490ポイント!対しまして、ラナン選手・・・なんと現在撃破枚数0枚!このまま不敗神話は脆くも崩れさってしまうのか!?」


観客からザワザワした悲鳴が漏れる。


「ひゃははは!ざまぁ見やがれ!」


アンドレは高笑いしながら攻撃の手を緩めない。

その時、警報音が鳴った。

シューティング部門では、相手への攻撃は違反であり、その射撃の照準に相手が入ると両選手ロボットの操縦席で警報音が鳴る。

そのシステムは大会主催者側から強制的に大会参加選手全員のロボットに組み込まれるようになっているのだ。

当然アンドレは攻撃の手を止めた。

砂煙が立ち込める破壊された遺跡の中に動く影。


「エルドールです!アンドレ選手の強行を止めるかの様に立ち塞がりました!」


少し薄れた砂煙の間からエルドールが現れた。

おもむろに右手に持ったスナイパーライフルをスッと上空へ向け撃ち放つと、砂煙が一瞬渦を巻きフワリと消えた。


「観客の皆さん。」


ラナンの顔が会場の画面に映し出された。


「それと、世界中にいる私の恋人達。待たせたね。前フリが少々野蛮だった事をお詫びしよう。その代わりこれから最高に高ぶる君達の心を撃ち抜いて見せるよ。それでは、そろそろショーを始めよう。」


その言葉に同調するかの様に、出現枚数が次々とカウントされ始める。

大歓声がうねりを上げて会場を包み込んだ。

読んでいただき有難うございます。

次話も読んでいただけたら幸いです。

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