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黄金の羽 ①

「さぁ!お待たせしましたと言わざるを得ないでしょう!」


その言葉に観客がざわつき始める。


「本日もっとも注目すべき選手、前大会シューティング部門優勝者ラナン・キュラス選手がいよいよ登場です!」


会場が大歓声に包まれた。


「うわぁ~!満席・・・。」


琴鼓が呆然と観客席を見回す。


「こりゃ座れなさそうだね。」


華凛も辺りを見回すが、見渡す限り満席だ。


「・・・琴鼓と皐月がモタモタしてたから。」


ヒスイが二人を睨み付ける。


「すみません。まさか、私としたことが食後のデザートを頼んでいる事を忘れてしまうとは思いもしませんでした。」


皐月が困った様に腕を組んだ。


「だからって、しっかり食べなくてもいいじゃん。」


華凛も二人を睨み付ける。


「華凛ちゃんもヒスイちゃんも食べれば良かったのに~。すっごく美味しかったよ。」


琴鼓はデザートを思い出してウットリしている。


「・・・そりゃ食べたかっ・・・急いでるって言った。」


ヒスイは思わず本音が出そうになって顔を赤らめ、ニヤニヤしている華凛の背中を叩いた。


「イタタ。それより、どうする?」


ニヤケ顔の華凛が言う。


「ん~・・・どっか座って見れるテレビとか無いかなぁ~。」


琴鼓がキョロキョロする。


「・・・ん~・・・それなら皐月の家で見ても同じ。」


ヒスイが溜息をついた。


「あ!君達!」


突然後ろから声が聴こえ、4人が振り返る。

そこには、美少年と美武士が立っていた。その身長差はまるで親子にも見える。


「あ!あの時の・・・。」


琴鼓が思わず二人を指差す。

それは選手控え室前の廊下で美青年の桔梗が開けたドアにぶつかり琴鼓が鼻血出した時にいた、ホップと牡丹だった。


「もう鼻大丈夫そうだね。」


ホップが無邪気な笑顔で言う。


「あ、はい!大丈夫です。」


なんとなく年下そうなのに何故か敬語で答えてしまう琴鼓。


「ところで、なにしてんの?・・・ってここにいるんだから観戦だよねぇ~。あ、そうか~。満席だから座れないって感じ?次の試合はシューティング部門のメインみたいなもんだからね。あ~そうだそうだ。この前のお詫びに空いてる席に連れてってあげるよ!いいよね?牡丹先輩。」


あっと言う間に、一人で喋って結論を出すホップに4人は呆気にとられた。


「ふむ。桔梗の件はこちらに落ち度がある。隊長も直接お詫びしたいとの話だ。良いだろう。付いて来い。」


牡丹はそう言うとさっさと歩き始めた。

ホップも笑顔で手招きすると先を歩き出した。


「ん~・・・どうしよ?」


琴鼓はだいぶ困った顔で3人の方を向いた。


「・・・別にいいんじゃない?イケメンだし。」


ヒスイが言う。


「まぁ、断る理由もないね。イケメンだしね。」


華凛も言う。


「え!イケメン関係あるんだ・・・。まぁイケメンだもんね。」


なんとなく納得する琴鼓。


「おやつと飲物も買って行きましょうか。イケメンさん達の分も。」


皐月はニコニコ楽しそうだ。

それから、特に反論も無く4人はホップと牡丹に付いて行った。

一度観客席から出ると、琴鼓達は約束通りおやつと飲物を人数分買い、観客席へ戻ろうとする。

ところが、ホップは別な方へと案内し始めた。

不安になりながらも選手控え室を抜け、辿り着いたのは選手チームスタッフルームと扉に英語で書かれた部屋の前だった。

ここは、試合出場中の選手チームスタッフが、ロボットのメンテナンスやサポートを行なう部屋で、観客席よりはるかに試合場に近く、見るだけなら最高の特等席だ。


「うわわわ!すごーい!」


琴鼓が大興奮で部屋を駆け回る。

部屋と言っても、ロボットのメンテナンスも行なう為、かなり広い。

窓からは試合場が一望でき、50インチのテレビ画面が数台、試合場を色々な角度から映し出していた。


「あ!君達は!」


少し遠くから声が聞こえた。

並んでいる大量の武器の間から桔梗が駆け出してきた。


「この前はごめんね。怪我は大丈夫?」

「あ、はい。もう治ったみたいです!」


琴鼓が鼻の穴をプクッと広げるとフンフン鼻息を鳴らして見せた。


「ふふふ。良かった。あ、ラナンを呼んでくるね!スタートが遅れてるから会えると思うんだ!ちょっと待ってて。」


そう言うと試合場側のドアを開けて飛び出していった。


「ラナンって・・・もしかして?」


華凛が目を丸くしている。


「・・・あのテレビとか出てる・・・?」


ヒスイが目を細める。

二人の反応にホップが嬉しそうに寄って来た。


「そうだよ!アニキはあの―。」

「気持ち悪いやつか!」

「・・・ナルシスト野郎か。」


華凛とヒスイがほぼ同時に罵った。


「・・・まぁ・・・はは・・・うん。」


ホップが苦笑いしている。

当然自慢しよかと思ったのだろうが、2人の気持ちも理解出来る分、言い返せなかったのだ。


「有名な人だよね!優勝した人だよね!ホップ君達はチームなの?」


二人とは違う琴鼓の反応に、ホップは満面の笑顔で頷いた。

そこへ巨体の牡丹がヌッと現れる。


「ホップ。あんまりウロチョロするな。皆さん、こちらへ。」


牡丹の示す先には、さっきまで無かった応接セットが並べられていた。

しかも、試合場も見え、テレビ画面も良く見えるように位置づけられている。


「わぁ~いつの間に!」


真っ先に琴鼓はソファーを飛び込むように座る。


「なんか趣味合わないわぁ~。真っ白なソファーって、汚れ目立つわぁ~。」


そう言いながら華凛は琴鼓の隣に座った。


「・・・まぁナルシストキャラには合ってる?うわ・・・ガラス張りのテーブル・・・割りたくなる。」


ヒスイは悪態つきながら一人用のソファーに座った。


「あの、飲物別けるのでコップ下さい。」


いつの間にか華凛の横に座っていた皐月は、すでにポテトチップスを皆が取りやすいように大きく開いてテーブルにセットしていた。

琴鼓が一番にポテチを鷲掴みにして頬張ったところへ試合場に続くドアが開き桔梗が飛び込んできた。


「ラナン呼んできたよ。あれ?この応接セットどこから持ってきたの?」


そこへ少し遅れてラナンが髪を掻き揚げながら入ってきた。


「やぁ!私に会いたいのはどんな子・・・あ!そのソファー私のじゃないか!な・・・ん・・・あー・・・やぁ!私に会いたいのはどんな子かな?」


しばしの沈黙。


「言い直したね。」


とホップ。

その場の全員が頷く。

そんなホップを一瞬睨むと、また爽やかな笑顔で4人が座るソファーへ近づいてきた。


「まずは、私からお詫びをさせて欲しい。桔梗が怪我をさせてしまったと聴いた。本当に申し訳ない。」


テレビのイメージとは違いしっかりと頭を下げて謝る姿に4人は戸惑った。


「ところで、どの子かな?」


頭を上げると4人を見回した。


「こ、この子です。」


華凛が言うと残りの2人も同時に琴鼓を指差した。

間が悪かった琴鼓の口の中には大量のポテチ。

モリモリと音を立てている。


「おぉう・・・。」


さすがのナルシストも言葉に詰まる。

琴鼓は、慌てて流し込もうとジュースを一気に飲む。


「ほげぁあ!ど、どうも、すびばせん。」


予想以上にむせ返る琴鼓の背中を呆れた華凛がさする。


「あんたねぇ・・・。」

「ぷっ・・・あははは!」


ホップが絵に描いたように笑い転げる。

その横を通って、桔梗がタオルを持って来てくれた。


「あでぃがとうございます。」


口の周りを拭いた琴鼓が改めてラナンに挨拶する。


「私、藤林琴鼓です!ラナンさんってあのシューティング部門で優勝したラナンさんですよね!?」


失態が無かったかのような屈託の無い琴鼓の笑顔にラナンが気を取り直す。


「あっはー!バレてしまった!いかにも私こそが、あのラナン・キュラスさッ!」


なんとなく調子が狂っているのか、ラナンはカッコいいのかどうか解らないポーズをする。


「隊長。あまり時間が・・・。」


黙って見守っていた牡丹がラナンの耳元でささやく。


「あ、ああ。レディ達。わざわざ来てくれたのにすまない。そろそろ私は戦いに身を投じなければならない・・・。いや!心配はご無用。必ず君達の元へ帰って来るよ。」


ウインクをして投げキッスを飛ばしたラナンは滑らかに左手を空にかざすとクルリと振り向き歩き出した。


「あ、ラナン!右腕の反応が少し鈍いみたいなんだ。それを考慮して指示だすからいつもと少しタイミング違うよ!」


桔梗が早口でラナンに告げる。

顔だけ振り向いたラナンが右手の親指と人差し指に中指を立て銃に見立てると軽く振って見せた。


「信じている。頼むぞ。」


ラナンはドアの向こうに消えていった。

それから10分程度時間が経った。

いやはや女四人の食欲はあなどれない。

ラナンの試合が始まる前にはすでにお菓子は無くなっていた。

読んでいただき有難うございます。

次話も読んでいただけたら幸いです。


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