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始まりのファンファーレ ②

「さぁ!始まりました第四十九回世界ロボット大会!大会本番に先駆けて当番組では様々なゲストをお呼びしまして大会のルールや見所を皆様にお届けしたいと思います。当番組司会と大会日本中継実況は私、「甲斐節男」がさせて頂きます!そして、コメンテーターには昨年に引き続き第三十五回大会においてレース部門3位に輝いた「マッハ・ライトニング五郎」こと「武田五郎」さんにお越しいただいております。よろしくお願い致します。」

「よろしくぅ!」


ここは、太平洋上空に作られた巨大競技場。

美しい曲線を多用したその外観は、近代的なイメージよりもどこか中世の神秘的なイメージを感じる。

色とりどりの飛空挺が飛び交い、更に上空には競技場よりも大きなスクリーンが、今まさに競技場内で最終調整している選手達とさまざまなロボットを映し出す。

そしてそれを、競技場内へ入れなかった人々が飛空挺を静止させ、食事等を楽しみながら各々鑑賞しているのだ。


「さて、今日から約2ヶ月に亘り競技が進められて行く訳ですが、ひとまずここで各部門内容とルールの説明を行いたいと思います。」

「第一部門!バラエティィィ!」


すると、画面には「第一部門バラエティ」とカラフルな文字が浮かび上がる。


「さぁ最初にご紹介致しますこの部門は、エンターテインメントを主体としたバラエティに富んだ部門です。エントリー数がもっとも多いこの部門。年齢制限なし、老若男女問わずに出場出来るファミリー向けの部門でございます!なにをやるかは皆さんの自由!それでは、ここで過去の出演作品をいくつかご紹介したいと思います!それではまず第十五回大会優勝『聖クリアミント女学院によるロボット聖歌隊』をご覧下さい。」


画面に、3段になった舞台が映し出された。

薄暗い舞台に、静かな音楽が流れ出すと、まず右から1段目、同時に左から2段目へと同じ型の中型ロボットが歌いながら進み出てきた。

聖歌隊だけあって黒と白を主体とした色使いと手に持つロウソクを模した発光体が印象的だ。

聖歌が盛り上がりを見せると左右の上空から光の階段が現れ、2対の大型ロボットが静かに降りて来る。

2対のロボットは、美しい真っ白な鳥の羽を背に生やした天使を模している。

2対の天使ロボットが3段目に舞い降りると、続いて観客席の上空に光の道が現れ、天使ロボットがもう1体、光の粒を撒き散らしながら舞台へ向い進んでいく。

その後ろにはたくさんの小型天使ロボットがラッパを吹き鳴らしついて行く。

そして、3体目の天使ロボットが舞台の中心へ舞い降りると、いよいよフィナーレだ。

聖歌隊の声は力強く四方へ向かい放たれる。

先に舞い降りていた2体の天使ロボットが片手を空に掲げると、2本の光の柱が空へ伸びてそそり立つ。

そして、聖歌隊の締めと同時に3体目両手を空に掲げると、2本の光の柱を基礎に光の壁が広がり会場を包み込む。

それはまるで、巨大な大聖堂の中にいる様に思わせた。

鳴り響く鐘の音。

小型天使ロボットは聖堂を回るように飛び、空から差す光の中へと消えていった。


「いやぁ・・・美しい!この聖歌をポップにアレンジしているところもたまらないですね!当時10歳の私も会場にいたんですけどね。この時の感動は今でも忘れません!」


大げさに感動する甲斐だが視線はすでに次の作品の資料を確認していた。


「さて、続いては・・・。」


それからいくつかの作品が紹介された。

キャラクターを模した中型ロボットで寸劇を行なう学生チーム。

装備型のロボットを使ったチアリーディングチーム。

少し前の大会からはヒーロー系の出し物が人気で、今大会では約二十チームはいるだろう。

ヒーロー系というのは、私服からオリジナルのパイロットスーツへ変身してポーズ。

そして、ロボットへの搭乗をいかに格好よく出来るかというもの。

やはり変身シーンと言えば女子のチームが人気だ。

そして、一番人気はやはり変形合体系だろう。

多種多様の変形、実践的な合体があれば見た目重視のものもある。

その迫力は、このバラエティー部門の花形と言っても良いだろう。


「いやぁ、今年もどんな選手達が出てくるか実に楽しみですね!五郎さん!」

「メリエルちゃぁぁlん!」

「おおお!さすがは五郎さん!やはり今年の優勝候補は、昨年彗星の様に現れたロボット界のビッグアイドル。もはや世界のアイドルと言って良いでしょう!私も五郎さんもファンクラブに入っております!さぁご紹介致しましょう!我等がロボットアイドル!機械仕掛けのエレクトリックユースティティア「メリエル・ラスティエール」ちゃんです!」


画面いっぱいに愛らしい少女が映し出されると、観客の割れんばかりの歓声が響き渡る。


「メリエルちゃんと言えば、フワフワした衣装からスレンダーなパイロットスーツへの変身!そして、やはりこれでしょう!最新鋭のモーションコントロールシステムとフェイスキャプチャーを登載したロボット「スウィートラヴァー」!これによりあの滑らかなダンスが可能になり、頭部を変形させフェイスキャプチャーで3D投影する事により、あの愛らしい顔がロボットと一体化するのです!美少女の顔にロボットの身体・・・。萌えですね!」

「メリエルちゃぁぁぁぁぁん!好きだぁぁぁぁ!」

「昨年は干支にちなんで虎型でしたねぇ。ということは、今年は兎型でしょうか!?実に楽しみです!そのメリエルちゃんの出番なんですが・・・来週の水曜日午後の部ですね!このバラエティ部門は、その他にもたくさんの素晴らしい作品がございますので皆さんお楽しみに!それではCMの後、あの3人組によるレース部門選手インタビューです。」


画面が提供へと切り替わり、いくつものスポンサーによるCMが流れる。

CMあけ画面に映し出されたのは、ぎっしりと人で埋め尽くされた観客席をバックに緊張した笑顔で立つ3人の女の子だった。


「映像来てます!」


生放送ならではの焦るADの声から番組の中継が始まった。


「さぁ、中継が繋がっております!レース会場のアイスティーサワーの皆さん!こんにちは!」


ワイプで抜かれた甲斐が手を振る。


「こんにちは!」


3人の声がハモる。

アイドルらしくフワリとした衣装は白と黒を基調としたワンピースで、頭にはそれぞれ違う色の髪飾り、胸には髪飾りと同じ色のコサージュを着けている。


「アイスティーサワーのぷりぷりプリティボンバー!アタシはみ~んなの妹♪ミルクでぇ~す!」

「アイスティーサワーのボーイッシュ担当!マニッシュ!フレッシュ!皆の心をリフレッシュ!ボク以外よそ見厳禁!レモンだよ!」

「そしてぇ~・・・セクシー愛で、貴方も私の虜。魅惑のセイレーン・・・さぁ跪きなさい!アイスティサワーリーダー・・・チャイよぅ!」


自己紹介が終わると「せーの」と言わんばかりに3人は目配せし、1オクターブ高い声で「よろしくお願いします!」と頭をふかぶか下げた。


「えー、彼女たち三人は前大会ではバラエティー部門出場。なんと自分達で装備型のロボットを製作。息の合った歌とダンスで観客の目を楽しませてくれました。残念なことに惜しくも3回戦で敗退しましたが、可愛らしい彼女たちの懸命な姿に感動したと言う方々からのメッセージが番組に殺到しまして、なんと今年は番組のレース部門のインタビュアーとして採用されちゃいました!そして、実はその後、3人にもサプライズな事があったんですよね!?」


甲斐が盛り上げると、待ってましたとチャイが大きく息を吸い込む。


「はぁい。私達アイスティーサワーがぁ・・・この第四十九回世界ロボット大会のイメージソングを歌わせて頂く事になったわよぅ。」


3人は決まっていた通りに「わー」と拍手。

続いてカメラへグイっと寄ってきたのがレモンだ。


「そしてそして!ボク達、そのイメージソングでCDデビューしちゃうんだな!」


今度は「イェーイ」と拍手。

最後に、センターに立つ澄まし顔のミルクへとカメラが寄る。


「アタシ達の気持ちをいぃ~っぱい込めたこのCDを皆さんにプレゼントしちゃいます!応募方法は後ほど♪」


そしてアップのミルクが精一杯のウインクをして見せたところで再びCMへ。

明けのスタジオではアイスティーサワーのCDプレゼント応募方法が報じられた。

その後、レース会場では3人によるグダグダのインタビューが行われ、「アイスティーサワーの皆さんありがとうございました。」と甲斐の新人を優しく見守る視線で彼女達のデビューは幕を閉じた。

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