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ショータイム ③

「ちょっと待ってよ。」


華凛はそう言うとララを睨み付ける。

その視線に絶対合わせまいとララは俯いている。


「どういう事なんですか?」


隣に座る琴鼓に問い詰められ、やっとの事で上げたララの顔はびっくりするくらい赤かった。


「あ、あの、私は、確かに、そうなんです・・・。」


ボソリボソリとララが呟く。

無言でララを見詰める琴鼓ら3人。

それを見詰めている獣人の男。

状況からしてララの執事の様だが、3人を咎めるでも無く、ララを助けるでも無く、少し楽しそうに見守っている。


「えっと、レバン。み、皆さんにお飲物を・・・。」


ララは、耐え切れなくなったのか男に指示を出す。

レバンと呼ばれた男は、人差し指を軽く立てた右手を顔の前に持ってくると、そうでしたと言わんばかりに無言で眉をあげた。

レバンが、車両前に備え付けてある冷蔵庫へ飲物を取りに行くと、残された4人の間には再び緊張と沈黙がおとずれた。

穴が開くほど見詰める3人と俯くお姫様。

その状況の理由は4人とも理解している。

アースクリエイティブ社へ復讐するためにチームを作り、琴鼓をスカウトしたララ。

だが、本人はアースクリエイティブ社社長の娘にして獣人達のお姫様。

相反する事柄を3人は理解が出来ないでいた。


「あ、あの・・・。」


そう言葉を搾り出そうとして、ララは大きく深呼吸をした。


「あの、すみません。皆さんが混乱するのも当然ですよね。私もこんなタイミングで皆さんに再会することになるとは思いませんでしたし。」


いまだ声は震えているものの、なんとかララは話し始めた。


「初めてお会いした時に、お話した事は本当の事です。それに、私が獣人の・・・その、ひ、姫である事も、アースクリエイティブ社に縁が深い事も事実です。詳しい話は後日必ず致します。ですから、今は、この事態を治める事の方が先です。」


確かにララの言う通りだ。

車外では野次馬の大半はイベントと思い込み、白川グループの誘導で公園を後にしていっているが、事態を不信に思ったマスコミが多く残っている。


「このイベントの主催は私達アースクリエイティブ社です。」


そう言うと、先程とはうって変わり真剣な顔で皐月の顔を見詰めた。


「白川皐月さん。貴女にお会いできて光栄です。何度と無く私のチームへスカウト申し上げたのですが良いご返事が頂けなくて残念でした。」

「やっぱり・・・思い出しました。あれはララさんだったんですね。」


皐月も真剣な眼差しで答えた。


「皐月。スカウトされてたの?」


華凛の問い掛けに皐月は頷く。


「すごくしつこいスカウトだったからなんとなく記憶にあったの。顔は見たこと無かったし、チームには入るつもりないから名前覚える気がしませんでした。」


皐月は獣人のお姫様の面目を見事に潰すと無邪気に微笑んだ。

苦笑いする琴鼓と華凛。


「わ、私も本名は名乗りませんでしたし・・・そ、それに実際にお会いした事はありませんでしたから・・・その・・・。」


懸命にスカウトを断られた言い訳をしようとするララの瞳にジワリと涙が滲んでいる。


「あ、泣いてる。」

「皐月。泣かした。」

「え?どうして?」


3人が身を寄せ小声で話す。


「な、泣いてません!」


ララの愛らしい泣き顔にすっかり毒気を抜かれた三人は思わず吹き出してしまった。


「ぷっ・・・あんたが悪人じゃないのはなんとなく分かったよ。」


華凛が言うと二人は頷いた。

きょとんとするララに琴鼓が言う。


「ララさん。スカウトの話はまた今度じっくりお話ししよ?まずは、この事態をどうにかするんですよね?」

「あ、は、はい!そうです!」


ララは涙をグイと拭いた。

ララの提案はこうだった。

イベント主催であるララ達アースクリエイティブ社が、急遽プログラムを変更しサプライズイベントにした設定で、世界でも指折りの白川グループと共同で、全て計画通りの内容だったという大まかな筋書きだ。


「でも、どうして?」


琴鼓が言う。

イベント主催であるアースクリエイティブ社にとって、事態の原因である白川グループを訴えるならまだ理解出来るが、完全に手助けしようとするのが疑問だった。


「すみません。もちろん、条件があります。」


ララは伏せ目がちに言う。


「だよね。」


華凛が溜息混じりに言う。


「条件というのは?」


さすがは白川グループの顔。

皐月は、当然の交渉として真っ直ぐララの目を見詰めている。


「あのロボット。操縦者ごと私達が保護致します。」


ララの言葉に琴鼓が立ち上がる。


「え!でも、小太刀君は・・・。」


そう言うと横目で皐月を見る。


「琴鼓さん。操縦者の方を悪い様には致しません。正直に申し上げますと、私達と言うのは社では無く、私のチームという事です。あのロボット自体の特異性に、操縦者のポテンシャル。是非とも私のチームに欲しいのです!」


ララは、拳を握り締め鼻息荒く言い放った。


「・・・要するに、この件を揉み消す代わりにチームへ入れって言う訳ね。」


華凛がララを睨み付けると、ララはまた俯いてしまった。


「それから、琴鼓さんも皐月さんもチームに入って欲しいです・・・。」


消え去りそうな声で、さらに条件を出すララの顔をえぐり込む様に睨み付ける華凛。


「私はそれでも構いません。」


皐月が答えた。

パッと顔を上げるララ。

華凛も驚きの表情で皐月を見つめる。


「ちょっと、こんな脅すような奴のチームに入るの?」


華凛が言う。


「お、脅すだなんて!そんなつもりじゃ・・・。」


ララが慌てて首を横に振る。


「脅しじゃなかったらどういうつもりよ?」

「あの、私はチームを作りたくて・・・。」

「はぁ?だからさぁ~。」

「ちょっと待って!」


二人の間でポカンとしていた琴鼓が止めに入った。


「あのさ。私は、ララさんは脅すような人だと思わないよ!」

「いや・・・現状がそうなんだって。」


華凛が呆れた声で言う。


「それに、チームの話・・・私、入ろうと思ってたし・・・。」


琴鼓の言葉にララの目が輝く。


「ほ、本当ですか?琴鼓さん・・・。」

「うん!」


見つめ合い頷く二人。


「なにがどうなってそんな分かり合ったんだか・・・。皐月も、それで良いの?あんたみたいのがチーム入ったらニュースになるよ。」


華凛は、そう言うとソファーにもたれかかる。


「そんな!私、芸能人じゃないよ?」


皐月はクスクスと笑う。


「・・・あんた達見てるとアタシがまともじゃない気がしてくるよ。」


華凛は呆れ顔で、すでにチームカラーがどうの話が盛り上がっているララと琴鼓の二人を見た。

その時、車の窓をコツコツ叩く音。

レバンが窓を開け、外の人物と何かを話している。


「わかりました。」


レバンは外の人物にそう答えると窓を閉め、ララに近づき頭を下げた。


「姫様。お話の途中申し訳ありません。現場からそろそろ撤去作業を開始してよろしいでしょうかとの事ですが。」


レバンの報告に、ララが慌てて3人を近くへ呼び集める。


「皆さん。どうか、私を信じて下さい。私はチームを作り大会に出て優勝を目指したいだけなのです。今は、時間がありませんが、後日、私の屋敷へいらしてください。その時、すべてお話致します。ですから、この場は私に任せてください。」


ララの必死の懇願に3人は顔を見合わせた。


「私は信じるよ!」

「私も構いません。」

「もう・・・わかったよ。でも、後でしっかりとした理由聞かせてもらうからね!」


3人は、この場をララに任せる事を承諾し、車を降りた。

見上げれば、小太刀のロボットがいまだ異様な雰囲気を出したまま立っている。


「小太刀くん大丈夫かな・・・。」


琴鼓が呟く。


「あとはララさんに任せましょう。」


皐月もやはり複雑な表情をしている。

すると、降りたばかりの車の窓がスッと開きレバンが顔を出した。


「皆様。来週の土曜ですが、メリエル・ラスティエールが新曲CDを持って屋敷へ来るそうです。これをどうぞ。」


そう言うと、新曲のビラを皐月へ手渡した。


「あ~・・・それと、姫様はとても純粋なお方です。どうかよろしくお願い致します。それでは、失礼致します。」


そう言うとレバンは満面の微笑みのまま窓を閉めた。

車が走り去った後に残された3人は、手渡された新曲のビラを覗き込んでいた。


「すごーい!メリエルちゃんに会えちゃうかも!」


琴鼓が声を上げる。


「すごーい!私、サインもらっちゃいます!」


皐月も興奮している。


「皐月ちゃん、メリエルちゃん大好きだもんねぇ!」

「はい!ファンクラブにも入っています!」


興奮する二人をよそに、華凛はレバンが言った去り際のセリフを思い出していた。


「姫様は純粋なお方ねぇ。アイドルで釣ろうとしているくせに・・・。」


華凛は、さらに去り際に見せたレバンの企みに満ちた微笑みを思い出した。


「あ・・・あいつが主犯か!?」


思わず大声を出した華凛に琴鼓は驚いた。


「な、なに!?どうしたの?」

「あ、ごめん。いや~アタシちょっと気になったんだけどさ。あの男、レバンってやつ。なんか怪しいと思うんだよね。」


華凛は大げさに腕組みして考え込む。


「ララってやつを信じた訳じゃないけど、あの感じは天然だよね?姑息な考え出来る感じでも無さそうだし。」


華凛の話に、皐月が大きく頷く。


「おそらく華凛ちゃんの言う通りだね。ララさんはそういうタイプじゃない気がします。レバンというあの執事の入れ知恵かどうかは解りませんが、ララさんの意思では無い事は知っている様ですね。悪意は無さそうですが・・・。」


皐月も大げさに腕組みしてみせた。


「気づいていたの?」

「はい。なんとなくですけど。」


皐月は溜息混じりに答えた。


「どういう事?」


琴鼓が二人の間に割ってはいる。


「あんたの言うとおりあの姫様は馬鹿正直なんだろうなって話。」

「お!華凛ちゃんもやっとわかった!?ララさんは良い人だよ!」

「まぁ似た人間が近くにいるからね・・・。」


華凛は皐月と目を合わせると苦笑した。


「とにかく、アタシも聞きたい事あるし来週の土曜日、のり込みますか!」


華凛は大きく伸びをしながら二人を見た。


「わーい!メリエルちゃん楽しみ!」


皐月はビラを握り締め飛び跳ねた。


「私もがんばるぞ!」


琴鼓は握り締めた両拳を力強く振り上げた。


「なに頑張るのさ。遊びに行くんじゃないからね。」


華凛は大きく溜息をついた。

読んでいただき有難うございます。

次回、シューティング部門4回戦目、ヒスイの実力が・・・

次話も読んでいただけたら幸いです。

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