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激戦!中央公園 ②

「なんという殺気・・・。」


千之助の背筋に冷たいものが走る。

操縦桿を握る手に汗が染み出してきた。

赤い二つの目はゆっくりと広場へ向かってくる。

おぼろげにその姿が見え始めたところで急に動きが止まった。

次の瞬間。

赤い目が線の様に延びたかと思うと、雑木林から華焔が上空へと飛び出した。

そのまま降下する勢いでロードオブランサーへ刀を振り下ろす。


ギィィィィィン


大きな金属音が鳴り響く。

華焔の刀を受け止めたはずの左ランスの半分が切り落とされた。


「グゥゥ!重い・・・!」


千之助が呻く。

直接衝撃が伝わるはずもないのに左手がビリビリと痺れるのを感じた。

後ずさりするロードオブランサーを挑発するかの様に華焔がゆっくりと機体を起こす。


「むむぅ。ずいぶんな余裕で・・・ん?その機体・・・。」


再び前のめりに攻撃態勢をとる華焔の鎧がボロボロと崩れ始めた。


「なるほど・・・それがあなたの正体ですか。」


兜が割れ、面が崩れ落ちると、露になったその素顔に野次馬からどよめきが産まれた。

一回り小さくなったロボットは、赤と黒の色彩で、曲線にまとめられたフォルムは鎧武者の時とは違いスタイリッシュだ。

それでも、やはり和の雰囲気が漂うその機体はまるで陣羽織を羽織っている様にも見える。

しかし、皆が思わず見入ったのはその素顔だった。

人とも獣ともつかないデザイン。

狼の様な牙を持ち、頭部には2本の角が生えている。


「鬼。獣・・・人の類ではなさそうですね。」


千之助が呟く。

華焔の全身から放つ異様な空気がそう思わせているのかも知れない。


「やはりこちらも本気を出さなくてはならないようですね。」


切り落とされた左ランスを大きく振り払うと元通りの鋭さを取り戻した。


「鬼退治と行きましょう。」


眼前に構えた右手にもランスが形作られる。

次の瞬間、真紅のマントが大きくなびき無数の光の粒が華焔へと降り注いだ。

華焔は最初に受けた時と同様に刀でそれを弾いていく。


「それでは多少サービスさせていただきますよ!」


光の粒がさらに増えていく。

それは、わずかに刀をすり抜け華焔へヒットし始めた。


「手ごたえあり!さぁ観念なさい!」


確かな手ごたえにロードオブランサーの目がギラリと光った。



この少し前。

真っ先に車を飛び出した琴鼓は街中を彷徨っていた。


「あ、あの!すいません!中央公園はどっちですか?」


尋ねる事5人目。


「中央公園なら来た道を戻って大きな交差点を右―。」


親切な老紳士が杖で方向を指し示すと、話の途中にも関わらず琴鼓は大きくお辞儀をして来た道を駆けだした。


「―じゃなくて、こっちからだと左・・・おや?おじょうちゃん?」


あっと言う間に人ごみへと消えていく琴鼓の背中を老紳士は呆然と見守った。


「急がないと!」


琴鼓が車を飛び出し彷徨っている間に大きな音が何度か聞こえていた。

町中もその音に色めき立っている。


「もう何か起こってる・・・!」


焦る琴鼓が勢い良く交差点を右へ曲がり再び迷子になろうとした瞬間。

間一髪左方向から大きな音とビルの間から巨大な竜巻が見えた。


「え?あっち?」


疑問とは裏腹に明らかな異変を感じた琴鼓は急旋回して巨大竜巻を目指した。

息を切らして中央公園へと辿り着いた時にはすでに分厚い野次馬の壁が周囲を取巻いていた。

何度か壁の強行突破を試みたが琴鼓の小さな体は易々と弾かれた。

公園内ではすでに竜巻が消え、多くの報道陣が集まってきている。

なんとか少し壁の薄い場所を見つけた琴鼓は、ピョンピョンと跳ねながらなんとか様子を窺おうとしていた。


「どうなったの?全然見えないよぉ~。」


琴鼓が泣きそうな声をあげる。

その時、一瞬運良く隙間から白い車が2台見えた。


「あ!今の車!」


見間違いじゃなければ一台は千之助の車だ。

華凛も居た様に見えた。


「てことは、もう1台は皐月ちゃんの!」


もう一度確認すべく、飛び跳ねようと深く屈んだ琴鼓は思わず声を出した。


「ああ!皐月ちゃんだ!」


なんと野次馬の足元の隙間から皐月が見えるのだ。


「無事だ!良かった!」


思わず格子を掴むように前の女性の両足を握り締め、その女性にすっとんきょな声を上げさせてしまった。


「わぁ!ごめんなさい!す、すいません。」


女性へ誤り倒すし、そそくさとその場を離れようとした時、急に周囲のざわめきが大きくなり始めた。

驚き振り向いたその視線の先に映し出されたのは、満月に浮かぶ華焔の黒いシルエットだった

次の瞬間、ぶつかり合う金属音が鳴り響いた。

琴鼓からは見えないがロードオブランサーの左ランサーが華焔に切り落とされた音だ。

人々が悲鳴を挙げる。

報道陣は危険を察知しいち早く安全圏へと退避した。


「な、なに?今の・・・戦ってる?」


野次馬の壁が一斉に崩れ始めた。

押し寄せる人波に耐え、広場へと近づく琴鼓の目に千之助のロードオブランサーと対峙する謎のロボットが飛び込んで来た。


「あれ・・・小太刀くんのロボット?」


華凛から聴いていた小太刀のロボットとは随分とイメージが違っている。

それは、すでに装甲が崩れ落ちた華焔の本当の姿だったからだ。

ふと、2体の足元から離れる2台の車が目に止まった。


「あ、華凛ちゃん!皐月ちゃん!」


2台は琴鼓の居る方向とは間逆に逃げている様だ。

そして、駆け出した琴鼓の目の前で戦いが始まった。

読んでいただき有難うございます。

止まらない戦い。その時、琴鼓は・・・。

次話も読んでいただけたら幸いです。

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