激戦!中央公園 ①
場所は、中央公園。
そこに、鎧ロボット華焔と対峙する2体のロボット。
そして、その足元には白い車が止まっている。
「対象応答ありません。」
レインからの通信に若い男性隊員が舌打ちをした。
「通信装置がないロボットなんて聞いた事ないぞ。」
「やはり直接操縦者とコンタクトとる方法を・・・。」
「ばぁか!この状況でそんな事できる訳ねぇ!さっきの見てただろう?」
居合い抜きのように前のめりの姿勢をとる華焔に対して2体のロボットは銃口を向けていた。
一触即発。
緊迫した空気がピンと張り詰めていた。
数分前、車を追って中央公園へ現れた華焔を待ち受けていた二人の護衛隊員は、猛然と突進してくる華焔に静止を呼び掛けた。
結果、敵意が無い事を示そうとして男性隊員のロボットが手をあげたところ、あっさり二の腕ごと左手を切り落とされたのだ。
「アトラさん・・・あの操縦者・・・。」
レインからの通信にアトラと呼ばれた男性隊員がゴクリと唾を飲んだ。
「ああ。なんなんだこいつは。殺気垂れ流しすぎだっての。」
突然静けさを破ったのは一台の車だった。
千之助が運転する車だ。
「隊長!」
アトラの気が反れる。
その瞬間を逃さず華焔が動いた。
「アトラさん!」
咄嗟にレインがビームシールドを展開。
だが、水平に抜かれた刀は異常な角度で跳ね上がると再び急角度に曲がりレイン機の頭部に振り下ろされた。
間一髪、上体を逸らしたレインだったが頭部の右半分と右肩から脇までをごっそり切り落とされた。
「きゃぁぁぁぁ!」
レインが悲鳴を上げる。
「しまった!レイン!」
咄嗟にアトラ機がレイン機を庇う。
そこへ振り下ろされた刀が流れるように足を削ぎにいく。
「食らうかよ!」
アトラは持っていた銃で数センチまで迫った刀を叩き落とした。
崩れ落ちるレイン機。
片腕のアトラ機は、刀を叩き落されバランスを崩した華焔の頭部に銃口を押し当てた。
「まだまだ甘いんだよ。」
勝ち誇るアトラの無線に千之助の声が響く。
「アトラ!離れなさい!」
次の瞬間。
アトラ機のモニターから華焔が消え、衝撃と共に両脚が切り離された。
「な・・・!なにぃぃぃ!」
両脚を無くし地面へ落ちていくアトラ機。
さらに止めを刺さんと華焔の突きが迫る。
だが、華焔は突如刀を引き後方へ飛び退いた。
「た、隊長・・・すみません。」
アトラ機を支える大きな影。
白い機体のロボットが真紅のマントをなびかせ立っていた。
「いいえ。遅くなってすみません。二人ともご無事ですか?」
操縦席には千之助が座っていた。
「はい。私はなんとか・・・。ロボットはもう動きませんが・・・。」
レインの申し訳無さそうな声。
「俺が油断しなければこんな・・・。くそっ!」
アトラが操縦席の壁を力任せに叩いた。
「彼は、恐ろしい力を持っている様です。私も気を抜けませんね。」
アトラ機をゆっくりと地面へ下ろした千之助のロボットが華焔へ向き直る。
「隊長が負ける訳ありません!隊長とロード・オブ・ランサーがあんなやつに!」
「アトラさん。彼と対峙した貴方なら解るはずです。」
「し、しかし・・・。」
「お二人は早くロボットから降りてお嬢様の元へ。後は私に任せて下さい。なんとなく血も騒ぎますしね。」
笑みがこぼれた千之助の目がギラついた。
静かな操縦席。
暗闇の中、モニターの光が小太刀の顔を照らしている。
目の前に立ち塞がった2体のロボットはすでに片付けた。
今はさらに強そうな1体が悠然と立っている。
「・・・面白い。」
小太刀の口から独り言と一緒に笑みが漏れた。
操縦桿を握っている手にはジワリと汗が滲み、腕の筋肉がピクピクと脈打つ。
「まずは、一太刀頂く!」
華焔が先に動いた。
迎え撃つロード・オブ・ランサーの右手が鋭く伸びると巨大なランスへと変わる。
華焔の右腕がしなり、鞘の中をすべり抜き放たれた刀がロード・オブ・ランサーの左脇へ延びる。
「良い動きです。だが、まだまだ大振り!」
千之助がそう言うのと同時に華焔の刀が弾かれた。
「ちぃぃぃ!二刀流かよ!」
華焔の刀を弾いたのはロード・オブ・ランサーの左腕だった。
小太刀が気付く間も無く右腕と同様の巨大なランスへと変わっていたのだ。
「では、次は私の番ですね。」
真紅のマントが大きくなびくと両腕のランスの突きが無数の光の粒へと変わり華焔に降り注ぎ、細かくも激しい金属音が公園に響き渡る。
「刀では雨はしのげませんよ!」
「うおおおおおお!」
小太刀が吼える。呼応する華焔の刀は最小限の動きで光の粒を弾いていた。
「これは・・・実に面白い!ですが、これで終わりです!」
攻撃の手を止め、大きく後ろへ飛び退くと右腕のランスを華焔に向け構える。
「あ、あの構えは・・・早くお嬢様を!とにかくこの場を離れるんだ!」
大破したロボットから這い出したアトラが叫んだ。
「行きますよ!」
千之助の目が大きく見開かれると、突き出した右腕のランスがキィーンという高音を放ちながら回転しだした。
「はっ!ドリルかよ!」
小太刀は鼻で笑うと華焔の向きを変える。
再び刀を鞘へと戻し、ゆっくりと前傾姿勢をとった。
「来い!」
小太刀が身構える。
「良い構えですが、受けきれますかな!?ロォケェェェット・・・ラァァァンス!」
千之助が吼えるとロード・オブ・ランサーの突き出した右手のランスが勢い良く華焔へ向けて発射した。
回転はさらに増し、周囲の地面や木々を巻き込み巨大な竜巻へと変わっていく。
「なに・・・あれ・・・。」
避難した車の窓から見ていた華凛が呆然と呟く。
「あれは、千之助さんの、ロード・オブ・ランサーの必殺技。ロケットランスだ。」
千之助の変わりに車を運転したアトラが目を輝かせて言った。
「名前ださっ・・・。」
華凛はアトラに聴こえない様にツッコんだ。
「こちらアトラだ。レイン。そっちは、お嬢様は無事か?」
アトラは別方向へ避難した皐月の寝台車へ連絡を試みた。
「・ちら・イン。・・・嬢様は、無事・・・。」
ガリガリという雑音の中、レインが皐月の無事を伝えてきた。
どうやら巨大な竜巻の影響で電波障害が出ている様だ。
「了解。事態の治まり次第合流する。」
「・解しま・た。」
通信が切れた。
ヘッドフォンを外したアトラが後部座席へ振り返る。
「華凛。怪我は無いか?」
アトラもレインも華凛や琴鼓とは小さい頃から顔見知りだ。
「うん。大丈夫だけど、あの・・・。」
「ん?どうした?」
「あの竜巻。小太刀って人、大丈夫かな・・・。公園メチャクチャだし。」
沈黙が流れる。
勢い良くヘッドフォンを掴むとアトラがマイクに向かって叫んだ。
「た、隊長!千之助さん!その技はマズいでしょうが!」
「あ・・・あぁぁぁぁぁぁ!調子乗った!」
ヘッドフォンから洩れてくる千之助の叫び声。
「アホじゃん・・・。」
数分後、舞い上がった粉塵も治まり、すっかり日が落ち暗くなった公園にライトが燈された。
すでに多くの報道陣が集まっていた公園は、野次馬も加え人々で騒然としていた。
千之助が調子こいて放った必殺技は、広場に残った巨大な爪痕を残し、小太刀のロボットを巻き込んだまま公園奥の雑木林へと消えていった。
皐月と合流した華凛はいまだのんきに寝息をたてている頭を軽く小突いた。
「うっ・・・なぁにぃ・・・?」
皐月は寝転んだまま両足をピンと伸ばして大きなアクビをした。
「皐月。アンタどんだけ鈍いんだよ。」
首だけを起こした皐月がキョトンとした顔で華凛を見ている。
「あれ?琴鼓ちゃんは?」
「あ~とりあえず琴鼓は大丈夫だと思う。先に飛び出したはずなんだけど・・・。実はね。」
華凛は事態を簡潔に話して聴かせた。
小太刀の名前が出ると顔色パッと明るくなったが、戦闘になってロボットごと吹き飛んだと聴かされると顔色を変え、車を飛び出した。
「千之助!どういうこと?小太刀くんにはちゃんと理由話したの!?」
ロボットから降りてきた千之助に皐月が詰め寄る。
「お、お嬢様!すみません・・・。全て私の責任で―。」
千之助が深々と頭を下げかけた時、微かな大気の揺らぎに動きを止めた。
「どうしたの?千之助?」
「お嬢様。すぐに避難を!」
そう言い振り返る千之助の顔は険しかった。
「皆さん!すぐにここから離れてください!急いで!」
大声で叫びながら千之助はロードオブランサーへと急いだ。
後ろから千之助を呼ぶ皐月の声も今は聴いている場合ではない。
いくつもの戦線を越えてきた彼にとって、この感覚は絶対的危険を示していたのだ。
再びロードオブランサーへ乗り込んだ千之助は雑木林へ向かい身構える。
その異様な雰囲気に見守る野次馬も静まり返っていた。
その時、パキパキッと木々が折れる音が聞こえ始めると、暗闇の中に赤い二つの目がユラユラと浮かんだ。
読んでいただき有難うございます。
「ことこぶ!」主人公、藤林琴鼓のイメージイラストを描いてもらいました。
@rtrtbzn
次話も読んでいただけたら幸いです。




