始まりのファンファーレ ①
1話目です。ロボット物は難しくて、誤字乱文があるかと思いますが、読んでいただけたら幸いです。
時は近未来。
いつの時代にも騒がれる人類滅亡説に世の中は殺気立っていた。
人類滅亡説なんてものは、いつの世も眉唾物の都市伝説としてバラエティーなどで取り上げられ、人々の娯楽となっていたはず。
だが、この年、世界政府より公開された滅亡説は、「説」ではなく滅亡へのカウントダウンだったのだ。
その公開された内容を要訳するとこうである。
「地球外生命体の大船団が地球へ向けて進行中である。到着は、およそ5年後だ。」
地球外生命体の存在自体は、近年、科学力の向上により宇宙調査が盛んになり信憑性のあるものとなっていたが、こうも突如として地球へやってきますよと言われればパニックになって当然である。
ともあれ、世界政府はその対応策へと負われる事となり、地球外生命体とのコンタクト方法等が議論され、世間の注目を集めた。
その中でも特に話題になったのが防衛策だ。
再び内容を要約するとこうなる。
「人型兵器を開発します。」
なんともふざけた政策だ。
まるで、アニメにでも出てきそうな人型兵器を作って宇宙人と戦おうとでも言うのか。
当時の世界政府にはオタクが多かったと言うしかないだろう。
結局、平和ボケした人類は各国で人型兵器製造を競い合うお祭り騒ぎとなっていった。
そして時は流れ・・・5年後。
地球防衛ライン。
ここは最前線の防衛ライン。
地球の衛星軌道上に散乱するスペースデブリの影響で高度2千km以上に張られた地球人最期の希望だ。
そこには、宇宙母艦と数百体の人型兵器が息詰まる宇宙空間の中、すでに戦闘態勢をとっていた。
その宇宙母艦には、日の丸のペイントが施されている。
人型兵器製造祭りで最優秀作品賞を見事に受賞した我らがオタク国家日本の部隊である。
調子良く自慢の技術とアニメで培ったオタクセンスを駆使して作り上げた宇宙母艦と人型兵器。
受賞した時は、国中大盛り上がりしたものだ。
マヌケな話、その結果が最前線である。
そしてついに、地球外生命体はコンタクト可能距離へと到達した。
全人類が注目の中、その姿は各国のテレビ画面に映し出された。
人類に酷似したその姿。
違うのは進化の基だろうか、どうやら猿ではない。
耳が頭部の左右ではなく、上に近い位置にピンと生えている。
これは、猫だ。それも雌猫だ。
オタク政府が一瞬「萌え」を感じたその姿は、確実に半獣半人、猫擬人化だったのだ。
全人類が息を呑む、最初の一言目はなんだろうか、語尾に「にゃん」とか付けられたらどうしようか。
様々な憶測の中、その猫人は口を開く。
見事な牙が印象的だ。
「こんにちは!そのロボット超カッコイイね!」
人類史上最高の拍子抜けである。
嬉しそうに尻尾を振るその姿に各国のネットサバーがダウンした。
言語については、どうやら自動翻訳がされている様で全人種に対応して放送されている。
そして、世界政府代表者が猫人へ問いかける。
「こんにちは。私は地球人代表として貴方達と話し合いを希望している。地球へは何故来たのか教えて頂きたい。」
その質問に猫人が真顔になる。
「ボク達は・・・。」
萌えレシピに「ボクっ娘」が追加された。
今にも泣き出しそうな顔で話続ける。
「長い長い年月を宇宙で過ごしました。やっと、やっとここまで来れたんです!」
大きな瞳からこぼれ落ちる涙。
声を詰まらせ両手で顔を覆う彼女を気遣うように、別の猫・・・。
いや、これは、犬・・・犬人がフレームインした。
「姫様。私が代わりを。」
「うん。お願い。」
スマートでスタイル抜群の犬人。
雄の犬人だ。
姫様と呼ばれる猫人とは違い長身で厚い胸板。
少し浅黒い肌。綺麗に整った顔立ちに、長めの耳が鋭く尖っている。
そして、全人類の女子がテレビにカジリ付く。
猫擬人化で「ボクっ娘」キャラのお姫様に、犬擬人化のクールでワイルドな美形執事。
絵に描いたような萌え劇場が全世界に放映されている。
立ち上がろうとする猫姫。
ふわふわしたスカートの裾を踏み転びそうになると、俊敏な犬執事が抱きかかえる。
ハッとした猫姫が顔を赤らめ犬執事の顔を見つめる。
「お怪我は?」
やさしく微笑む犬執事に小さく首を振る猫姫。
全人類がポカンとする中、犬執事が猫姫に代わり交渉に立った。
「地球の皆様。突然の訪問にさぞ驚かれた事でしょう。姫様に代わり僭越ながら私が説明させていただきます。」
そういうと深々とお辞儀をしてみせた。
「私達は難民なのです。故郷の惑星は、恒星の寿命による膨張に飲み込まれました。間一髪宇宙へ逃れた私達は他の銀河を転々とし、どうにか移住出来ないかその星の住人と交渉を続けてきたのです。ですが、環境の違いや生態系の違いで交渉はどこも決裂。さらには好戦的な住民に、多くの同胞が命を奪われました。」
犬執事はうつむき、拳を握り締めワナワナと震わせる。
「しかし、とある惑星の住人から素晴らしい情報を頂きました!私達の故郷と環境がほぼ同じで、住人も、とても平和的な星があると!それが、地球なのです!」
画面を通して伝わる犬執事の想いが人々の心を動かす。
「どうか・・・どうか私達を助けて下さい。私達の持てる技術を全て地球の人々の為に役立てます。住む場所も決して邪魔にならない様に致します。だから、どうか・・・。」
泣き崩れる犬執事。
そこへ猫姫が駆け寄る。
「ああ、貴方がそんなに想っていたなんて・・・。ボクうれしい。」
「姫様・・・。この見っとも無い姿、お許し下さい。」
なにかきっとこの二人には身分を越えた禁断の何かがあるのだろうなと人々は思った。
でも、ここまで見事だと「なんだかなぁ」とも思えた。
かくして、たっぷりと敵意が無い事を見せ付けられた地球人類は、彼等数千人の移住を快諾。
彼等は、太平洋上に自らの宇宙船団を基礎に海上都市を建設する事となった。
さて、お忘れではなかろうか。
あのオタク国家日本が調子に乗って作った「人型兵器」。
結局、地球へやって来たのは侵略者ではなく、超友好的な萌え獣人。
さっさとお払い箱になるかと思われたのだが、なんとその発想力とデザインが猫姫の絶賛を受け、獣人らの技術を加え、新たな進化を遂げる事となる。
そして、将来それは全世界を巻き込む巨大エンターテインメントとなっていった。
時は流れ・・・
獣人との共存を始めてから既に五十年以上の年月が過ぎていた。
読んでいただき有難うございました。別作と同時進行ですので、投稿は一応交互に行いたいと思っていますが、たまに不定期になるかもしれません。その時は大目に見てください。