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1-3

 ナタリアは改めて応接間にデュークたちを通すと、ハーブティーを入れながら簡単に今朝の置き手紙のことを話して聞かせた。


「そんなわけで、おじ様に今夜相談に行こうと思っていたのに、まさか留守だなんて……」


 どうしよう……と再び頭を抱えるナタリアに、デュークがさらりと言った。


「悩むことなどないだろう。リュシアンがいないのなら、お前が代わりに行けば良い」


 デュークの言葉にナタリアは無表情のまま凍りつき、テスは無言で肩をすくめた。


「? どうしたんだ、二人とも?」


 僕は何かおかしなことを言ったか? と呟きながらナタリアとテスの顔を交互に見つめるデュークに、テスがそっと指摘する。


「デューク様、それはあまりに無神経な発言かと……。いえ、わたくしはそうやって言葉で攻めるというのも決して嫌いではないのですが……」


 しかしデュークは心底不思議そうにテスを見返した。


「なぜだ? ナタリアが使役獣を見出せていないことなら、心配ないぞ。明日までに召喚すれば良いだけのことだ。オルブライトの者であれば、決して難しいことではないはずだ」


「――出来るならとっくにやってるわよ……!」


 思わず大きな声を出してしまい、ナタリアは恥じるように浮かしかけた腰を椅子に戻した。この二人の前で泣くことは絶対に避けたかったが、正論に対して言い返すことが出来ない悔しさと情けなさで、おまけにいなくなった兄のことまでもが頭に浮かんできて、今にも涙が溢れそうだった。


 ナタリアは暗くなりそうな顔を必死で明るく取り繕う。ここで泣いてしまったら、もっと自分が情けなくなる。


「大きな声を出してごめんなさい、デューク。そうよね。あなたの言う通り、本来ならこんな時は兄に代わってわたしが陛下の前に出向くべきなのかもしれない。でもあなたたちもよく知っているように、わたしには獣を召喚する力がないわ。獣を連れていない猛獣使いなんて、剣を振るえない剣士も同然よ。わざわざ無能を示しに行くのは、このオルブライト家の名前を辱めることになる……」


 限界だったのか、そこで唇を噛んで俯いてしまうナタリアに、デュークは追い討ちを掛けるように言い放つ。


「だから、なぜ召喚できないと決め付ける? やってみなければわからないだろう」


「わかるもの! 今まで散々やってきたわ! でもだめだったの!」


「今日はやってみたのか? 昨日は? お前の言う『散々』とはどの程度なんだ?」


 とうとう睨み合いを始めてしまった幼馴染二人に、やれやれといった表情でテスが割って入った。


「まあまあ。お二人とも落ち着いてください。……ナタリア様、我が主は単にこう申し上げたいのだと思います――『お前ならできるはずだ』――と」


 テスの言葉に、ナタリアと、それからデュークも目を丸くしてテスを見上げた。テスは静かになった二人を満足そうに見下ろしてから、改めてナタリアに視線を向けると、とろけるように甘く優しい声で言葉を掛けた。


「……ナタリア様。獣のわたくしが言うのもなんですが――いえ、獣のわたくしだからこそわかると言えるかもしれませんが、あなたには、確かに猛獣使いの素質が備わっています。今までは何らかの事情で獣を召喚することができなかったかもしれませんが、いつか必ず、召喚できる日が来るはずです」


「テス……」


「それは数年先のことかもしれないし、もしかしたら明日かもしれない。いえ、今日かもしれません。ようするに、すべてはあなた次第なのです。あなたが勇気を出して、失敗を恐れずに行動を起こせば、必ずやあなたのもとにあなたの魂の声を聞く獣が現れましょう――と、我が主もこう申し上げたかったのかと」


 最後の部分はナタリアの耳には入っていなかった。テスの思いがけない真摯な言葉に、さっきまでの悔しさや怒りは一瞬にして消え去り、ナタリアはきゅんと胸が締め付けられる思いがした。


 テスは黙っていればかなり美形だ。その美しい顔と甘い声で優しく諭すなんて卑怯だ、とナタリアは密かに思った。テスのことだからおそらく動揺する自分の反応を見て楽しみたいだけなのだろうが、そんなふうに言われたら、なんだか自信を持ってしまいそうになる。


「で、でも、今まで何度やっても何も召喚できなかったし……」


 自分に言い聞かせるように呟くナタリアを、テスは目を細めて見つめた。


「諦めてはいけません。ご自分の素質を信じるのです。大丈夫、このわたくしがついています」


「おい……僕の言葉という話はどこへ行った?」


 主のツッコミを華麗にスルーして、テスはずいっと身を乗り出すと、テーブルを挟んだ向こう側に座るナタリアの両手を情熱的に掴んだ。そのまま、美しい金色の瞳を煌かせてナタリアを見つめる。


「――ナタリア様。今日のあなたはどこかいつもと違う、神秘的な雰囲気をまとっておられます。もしや今日ならば、獣を召喚できるかもしれません。今この場で試されてみてはいかがですか?」


 いつになく優しいテスの言葉に、ナタリアの胸に期待が満ちてくる。どきどきと高鳴る胸を押さえながらナタリアがテスを見上げていると、ついに我慢が限界に達したのか、デュークがわーっとか何とか言葉にならない声をあげながら、無理やりナタリアとテスの手を引き剥がした。


「いい加減にしろ! 二人で見つめ合うな! 手を繋ぐな!!」


 そんなデュークをまったく気に留める様子もなく、ナタリアはテスのおかげで少しだけ前向きな気持ちになっていた。使役獣であるテスに『猛獣使いの素質がある』と言われたことが、素直に嬉しかったのだ。


「わたし、やってみようかな……」


 ぽつりと呟くと、ナタリアはおもむろに椅子から腰を上げた。

 テスの性格は把握しているので彼の言葉をそのまま鵜呑みにしたわけではないが、なんだか今日の自分なら、特別なことが出来そうな予感がする。

 ナタリアはゴクリと喉を鳴らすと、掌をめいっぱい広げて床に向けた。

 傍らで見守るデュークの緊張した息遣いだけが部屋に響く。


「――と、その前に」


 ふとナタリアは構えを解くと、胸元からするすると金のロザリオを取り出し、首から外してテーブルの上に置いた。


「何だ、それは?」


 幾分拍子抜けしながらも、デュークが置かれたロザリオをひょいと持ち上げ、興味深そうに手の上で転がして観察する。


「これね、今朝兄さんの手紙と一緒に置いてあったの。母さんの形見らしいけど、兄さんが念を込めたって書いてあったから、なんだか不吉な気がして。ここ一番というときにはちょっと縁起が悪いでしょ」


 確かに……と短く答えてから、ロザリオをテーブルに戻そうとしたデュークの耳元に、テスがそっと顔を近づけてささやく。


「……ナタリア様の温もりが、まだ残っておりますね」


「――!」


「嗚呼、そのロザリオは、ナタリア様の衣服の下、一体どの辺りに納められていたのでしょうか? わたくしの想像では二つの膨らみのちょうど真ん中辺りに――……」


 そこまで言って、テスの口は耳たぶまで真っ赤になったデュークの手でがっしりと塞がれた。

 デュークは慌ててナタリアを見たが、彼女は二人のやり取りにはまったく気が付いていない様子で、真剣な表情のまま二つの掌を広げて床にかざしていた。


 ナタリアは、昂る期待と緊張に踊る鼓動を、なんとか呼吸を整えて落ち着かせる。


 ――大丈夫、できるわ。


 いつもと同じように、自分にそう言い聞かせる。そうして細く息を吸い込んでから、ナタリアは鋭い声で言葉を放った。


「我が魂に傅く聖なる獣よ! 我が声を聞き、汝の主の求めに応えよ――!」


 にわかにナタリアの開かれた両の掌から、薄っすらと輝きが滲み出す。その輝きは細く儚げな光の糸となり、繊細な魔方陣をゆっくりと虚空に描き出していく。


「く……っ」


 ナタリアの眉間が、苦しげに歪められる。掌に神経を集中しようとすればするほど、まるで全力疾走をしているように心臓が激しく鼓動し呼吸が苦しくなっていく。


 やがてさっきまで何もなかった空間に、ナタリアの身の丈を越えるほどの大きな魔法陣が出現した。


 しかし次の瞬間、魔方陣は激しく虹色の光を放ったかと思うと、すぐに空気に溶けるように薄らいでいった。そうして完全にその輝きが見えなくなっても、ナタリアたちの前には獣どころか虫の一匹さえも姿を現しはしなかった。


「……そうだよね、そんなにうまくいかないよね……」


 肩で息をしながら、ナタリアは落胆しきった声を漏らす。額に滲んだ汗が、儚く消えていった召喚魔法がどれほど今の彼女にとって精一杯のものだったのかを物語っていた。


「今度こそ、出来ると思ったのにな……」


 悲しそうにそう呟くナタリアを前に、テスは勢いよく頭を下げた。


「申し訳ございませんでした、ナタリア様。我が主が、いい加減なことを言ったばかりに……。主に代わってわたくしがお詫び申し上げます」


「お、お前というやつは……っ!」


 テスを責めようと開きかけたデュークの口は、落胆するナタリアの様子を目にして閉じられた。

 ナタリアとは物心つく前からの付き合いだ。彼女がオルブライトという猛獣使いの名家に生まれながら獣を召喚できずにいることにどれほど苦悩し、自分を責めてきたのかをデュークは今まで嫌というほど見てきた。『君なら獣を召喚できる』などと無責任な発言をして彼女に根拠のない期待を持たせても、そのたびに失敗して、ナタリアは返って自信を失っていく。獣を召喚するということはナタリアにとって決して冗談半分に触れていい事象ではないのだ。


「――それでも、僕は信じている。お前には絶対に猛獣使いの素質がある」


 そう言ったデュークの瞳があまりにも真剣で、ナタリアはなんだか泣きたくなった。嬉しいような、悔しいような、情けないような、複雑な感情が交じり合って、ナタリアの目に熱いものが滲んでくる。


「慰めてくれなくてもいいのよ。わたしだって馬鹿じゃない。もう半分以上諦めているのよ――わたしは『素質を持たない者(リスタリア)』なんだって」

「お前は『素質を持たない者(リスタリア)』なんかじゃない!」


 きっぱりと言い切るデュークを、ナタリアは哀しそうに苦笑して見つめた。


「どうしてそんなに自信たっぶりなのよ……」


 わたし自身がわたしに自信を持てないのに……この幼馴染の方が、どうしてこうも自信たっぷりに言い切るのだろう。

 見上げたデュークは、潔いくらいきっぱりと答えた。


「どうしてと言われても……ただの勘だ!」


 あまりの返答にナタリアとテスはぽかんと口を開けたが、デュークはそんな二人の反応をまったく意に介さない様子で続けた。


「だが、僕の勘はよく当たる。自信を持って良いぞ」


 そう言ってなぜか自慢げに胸を張るデュークに、ナタリアがどう言葉を返したらいいか迷っていると、テスが気を取り直したようにナタリアに声をかけた。


「……まあ、デューク様の自信の根拠はさておき。わたくしも、やはりナタリア様には猛獣使いとしての素質が備わっていると思います。脆くはありますが、魔法陣が生じることがその確かな証です」


「だけど……わたしのは、完成するのに時間もかかるし、輝きも弱いし、それにすぐ消えてしまうし。何より、口訣を唱えても、何の手ごたえも感じないの。わたしの言葉の向こうに、応えてくれる何かの気配を見出せない」


 ナタリアは兄やデュークがテスたち使役獣を召喚するときの姿を思い出す。彼らが召喚魔法を使うとき、かざした両手は眩しいほどに光り輝き、紡がれた光と言葉は一瞬のうちに見事な魔法陣を描き上げる。そのわずかな綻びもない美しい模様は鮮やかに光を放ちながら回転し、まばゆい虹色の輝きの向こうには、混沌から主のもとに参じた使役獣の姿が現れる――。


 それはまるで、美しい音楽の調べが具現化されたような幻想的な光景だった。


 それに比べて、自分の召喚魔法はどうだろう。ぎこちなく、たどたどしく、音楽の旋律などとは程遠い。町の魔法学校の子供たちのお遊戯だってもう少しましというものだ。


 これ以上ないほど大きなため息をつくナタリアに、デュークとテスもかける言葉が見つからず互いに顔を見合わせた。


「明日、陛下になんて言おう……」


 不安げにそう呟いて俯いてしまうナタリアを見て、デュークがフン、と鼻を鳴らした。


「ま、まあ、お前がどうしてもと言うのなら、明日は僕も一緒に陛下のもとへ行ってやっても構わないぞ」


「ほ、本当に!?」


 願ってもないデュークの申し出に、ナタリアはぱあっと顔を輝かせた。陛下の前に参じるというだけでも気が重いのに、その上失踪した兄のことをどうやって説明すればいいのか、ナタリアにはまったく見当が付かなかった。

 さらには自分が『素質を持たない者(リスタリア)』だと知れれば、オルブライト家の信用はがた落ちどころか無に帰すかもしれない。そう考えると不安でたまらなかった。デュークがそばにいてくれると言うのなら、一人きりではないと言うそれだけで、だいぶ救われる気がした。


「本当だ。明日は僕も一緒に行ってやる。だから、そんなに不安そうな顔をするな。それにあの変人兄のことだ、もしかしたら明日にはふらりと帰ってくるかもしれないぞ。とりあえず僕は早急に父上に使いを出しておく。早ければ三、四日もすれば兄上のどちらかが帰って来てくださるはずだ」


「そんな……おじ様たちだって任務中なのに悪いわ」


「今更そんなことを言っている場合か。まさか、正直に変人の兄は家出しましたとでも陛下に言うつもりか?」


「そ、それは……」


「言っておくが、オルブライト家のためにもリュシアンが家出したなんてことは黙っていた方がいいと思うぞ。父上だってきっとそうおっしゃるに決まっている。陛下には体調を崩してしばらく休養を取っているとか何とか言っておけばいい。数日隠し通せれば、兄上たちが戻って来て何とかしてくださるだろう」


 デュークの申し出は正直ありがたい話だったが、ナタリアの表情はまだどこか晴れないままだった。何と言っても、愚かな兄のせいでボウヤー家のおじ様やデュークの兄たちにまで迷惑をかけてしまうのは心苦しい。

 それに体調不良などという言い訳がいつまで通用するのだろうか。もしも万が一兄がこのままずっと帰って来なかったら……どうしても浮かんでくるその不安を、ナタリアはどうしても拭い去ることができなかった。

 青い顔のままでいるナタリアに、デュークは憮然とした表情で言った。


「心配するなと言っているだろうが! もしも変人兄の代わりに猛獣使いを寄こせと言われたら、僕がお前の代わりに行ってやる!」


「デューク……」


 一人ぼっちになるかもしれないという心細さと、いつまでも獣を召喚できないことへの自己嫌悪に滲んだ涙の向こうに見えるデュークは、いつもより少しだけ大人びて見えた。小さい頃はナタリアより背が低くて、いつも後ろをついて回っていたのはデュークの方だったというのに。当たり前に同じ時を過ごしてきたこの幼馴染は、いつのまにこんなに頼りがいのある大人になってしまったのだろう。これではまるで、伝承に語られてきた麗しく凛々しい歴代のボウヤー家の男性みたいではないか。


「だから、いつまでもそんな不安そうな顔をするな。この僕が付いていてやると言っているんだ。一体何を心配する必要がある?」


 すると、それまでずっと黙って主の姿を見守っていたテスが、震える声で静かに口を開いた。


「……デューク様」


「何だ?」


「――それはもしかして、プロポーズですか?」


 デュークの顔が一瞬のうちに真っ赤に染まる。そのまま硬直すると言葉を発することができない人形のようにパクパクと口を開け閉めしてから、なんとか声を発した。


「なっ! ちがっ! 違うぞ! 今のは言葉のあやだ! ぼ、僕がお前にプ、プププププロポーズとか、そんなことあるわけないだろうっ!」


 可哀相なくらい動揺している主の姿をテスは感慨深げに見つめながら、わざとらしく涙など拭っている。


「子供だ子供だとばかり思っておりましたが……デューク様も、もう一人前の男になられたのですね……」


「――消えろ、テス」


 デュークが苛立たしげにそう呟いた刹那、テスの表情が不服そうに歪む。しかしすぐに畏まった声で短く答えた。


「――主の仰せのままに」


 その瞬間、テスの姿が、泡がぱちんとはじけるように消え去った。たった今までテスが立っていた場所には、彼の靴跡さえ残っていない。


「なにも帰すことなかったのに……」


 自業自得とはいえ少し可哀相だと思いながら、ナタリアはテスのいた空間を眺めた。使役獣にとって主の命令は絶対だ。混沌に帰されたテスは、次にデュークが召喚しない限り再び姿を現すことは出来ない。


「お前、あいつを庇うのか? ――まったく。あいつのねじくれた性格にも困ったものだ」


 デュークはぶつぶつと悪態をついていたが、ナタリアは彼らの主従関係をいつも羨ましく思っていた。

 ドSで主を精神的に虐めることに快楽を感じているテスと、そんな使役しているはずの獣に振り回されている主人のデューク。二人は常になんだかんだと言い合い、じゃれ合う子供のように騒がしいが、いざというときには見事なまでの連携を見せる。そこには確かに魂の元に繋がれた絆が感じられたし、お互いに本能レベルで『信頼』し合っている――そんなふうに思えるのだ。


 羨ましい、と素直に思えた。わたしにも、わたしの魂に応えてくれる獣がいつか現れると、ずっとずっと信じていたのに……。

 再び俯いてしまったナタリアに気付いて、デュークは不思議そうに首を傾げた。


「? どうした?」


「ううん、なんでもないわ」


 そう言ってナタリアは笑ったが、その笑顔がぎこちないことは明白だった。

ナタリアもテスもそれ以上何も言わず、二人は黙ってすっかり冷めてしまったハーブティーを見つめていた。


 不意に訪れた沈黙に、デュークは今この家にはナタリアと自分しかいないという事実に思い至り居心地悪そうに身をよじった。テスがいないと、なんだか場が持たない気がするのは気のせいだろうか。すぐ目の前にある寂しそうな細い肩に手を伸ばしたいが、素直にそうできない歯がゆい感覚。

 無意識に伸ばしかけた腕を、デュークは慌てて引っ込めた。


「と、とにかく! 僕は早速父上に使いを出しに言ってくる。お前も、いつまでもめそめそしていないでリュシアンの行きそうなところでも探してみるんだな」


「め、めそめそなんてしていないもの!」


 むっとして言い返すナタリアを見て、デュークは満足そうににっと笑った。


「言い返す元気があるなら大丈夫だな。何かあったらすぐ僕を呼ぶんだぞ」


 そう言って逃げるように出て行くデュークの背中を見送るナタリアの心は、ついさっきまで押し潰されそうなほど重苦しかったはずなのに、いつの間にかずいぶんと軽くなっていた。



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