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詩集

月へ還る君に

作者: 杠 夜朱

君の美しさに惹かれて

君の儚さを愛しく想った

生きる世界が違うのに

君を欲しいと思ってしまった


君の隣を手に入れようと

僕は足掻いて手を伸ばした

水面みなもに映る月を手にすることはできないのに

その輝きを得ようとがむしゃらに駆けた




あの夜 僕らの想いは敗れ

君と僕は引き裂かれた

荘厳雅な光に導かれ

君は君のいるべき場所へと帰って行った


僕はただただ夜空を見上げて

君を見送ることしかできなかった

言葉を交わすことも 赦されず

君の涙をぬぐうことすらできなかった




来る日も来る日も 僕は悲しみに暮れた

君が残してくれたものも燃やしてしまおう

君の残り香を感じるたびに 

胸が引き裂かれそうだったから


雪降る聖地で灰へと還そう

君が残した僕への手紙を

君が残した妙なる秘薬を

君はもういないのだから





帰っていく君は 僕の知っている君ではなかった

帰っていく君の眼にいつもの優しさはなかった

帰っていく君の心は冷たく凍てついていた

帰っていく君を見て 僕とは生きる世界が違うと思い知らされた






僕と同じ世界で共に時を刻んでくれた君を

僕は愛したんだ

羽衣をその身にまとっていなかった

大地で生きる君が愛しかった


だからもういらない

羽衣をまとって月の世界で生きる君は

僕の愛した君じゃない

だから君のよすがを すべて君に還すんだ
















―――会ふこともなみだに浮かぶわが身には死なぬ薬もなににかはせむ

                        『竹取物語』より





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