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厚いガラス

厚いガラス


 声を発することが出来ない、という美羽の障害には、相手の人間性を掴みやすいという利点もある。

 弱者に対してどうあろうとする人間か。侮るか、労わるか。早口で喋ることで、美羽の気持ちを追い立てないか。美羽が紙に言葉を書く暇を与えるか。焦れずに待つことが出来るか。書かれた言葉を読み、美羽の意思を汲み取ろうとするか。

 竜軌や真白は、当たり前のように美羽が求める理想を体現してくれる。

 新庄孝彰が美羽を測ろうというのならば、美羽もまた彼という人間を測ろうとしていた。

 そして孝彰は、〝声の出ない少女〟に対して、十全な配慮を示す大人だった。

 そのことは美羽の心に余裕を生んだ。

「美羽さんから見て、竜軌はどんな人間だろうか」

 ゆっくりとした口調で、孝彰が尋ねる。美羽を急かすことのない鷹揚さ。

〝優しくて、誇り高い人です〟

「――――――竜軌を評価するのに、まず優しさを挙げた人間は、君が初めてだよ。大抵はあれの聡明なことや精神的強さ、行動力などを褒める」

 美羽はテーブルの上に置かれた、ガラスの灰皿を見た。

 透明で硬くて、強くて美しい。だが割れない訳ではない。粉々に砕け散らないというものではない。

〝竜軌は、私の知る中で一番、強い人間です。でも感情が豊かです。悲しんだり、傷ついたりします〟

「私は君に責められているのかな」

〝いいえ。彼は、自分を強く律する人です〟

 孝彰の目に、傷つくような色が走った。



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