表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/663

弟たち

弟たち


 主君の大事な女性。

 自分たちも嘗て御方様と呼び、親しみ、尊んだ女性を侵害する輩がいる。

「なあ、兄上」

「何だ、力丸」

「上様は、なぜさっさと殺ってしまわれぬのだろう」

「……差し障りがあるからだろう」

「どこに?神つ力を持つ人間に、人の殺傷はそう難しい話ではない。結界の中で殺めてしまえば良いのだ。神器で殺め、結界を閉じる。そうすれば遺体も凶器も見つからない、完全犯罪の成立だ」

 蘭の二人の弟は、美貌の兄によく似た顔を向い合せていた。

「それが御方様のお心に沿うかどうか、測りかねておられるのやもしれん。今は昔とは違うのだ。力丸。上様の命なくして早まった真似をするなよ」

「…解っている。解ってはいるが」

 俺は奴をぶち殺したいのだ、と少年は続けた。


 森長氏力丸(もりながうじりきまる)が初めて帰蝶に会った時、彼はまだ十五にもなっていなかった。

 帰蝶は年齢にしては若く、円熟した美貌の持ち主だった。

 信長を守ってやって欲しいと言われ、力の入った返事をすると、彼女は笑った。

 この方は上様を愛しておられるのだと思い、嬉しくなった。

 信長の側近く仕える森家の兄弟たちにとっても、帰蝶は守るべき、尊い女性だった。

 そして森長氏力丸は、二人の兄・森成利蘭丸、森長隆坊丸(もりながたかぼうまる)らと共に、帰蝶に誓った通り信長を守るべく奮戦して十代の若さで果てた。

 力丸はそのことを誇りに思いこそすれ、少しも悔いていない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ