風が聞く
風が聞く
美羽の胸はばくばくと暴れていた。
こんなに誇り高い人に、ひどく浅ましいことを言った。
竜軌の存在が丸ごと欲しくて。
軽蔑されるかもしれないと思ったのに、竜軌は変わらず良いよと答えた。
〝どうして?〟
「何が」
〝いいよ、って〟
「美羽が欲しいと言ったから」
〝竜軌が好きで、苦しいの〟
竜軌の頬にポタリと雫が降る。
竜軌は身を起こすと、美羽の目に溢れる涙を唇で吸った。海の味だ、と言う。
「美羽。俺はその内、お前を抱くだろう」
美羽の濡れた睫が上下に動く。
「お前が嫌なら、他所に住まいを手配する。真白たちの家に仮住まいしても良い。ただ、お前を狙う変態を潰してからの話になるが」
〝離れたくないわ〟
「…近くにいれば抱くぞ。割と今でも、我慢の限界なんだ」
美羽の顔は真っ赤になっていた。
〝七つも年下の、何も持ってない子供で良いの?〟
「他の女は要らないと言った」
〝でも、結婚する相手としか、嫌なの〟
「なら俺と結婚しろ」
〝本気で言ってるの?〟
「ああ。他の男とお前がどうこうなると考えたら正気でいられなくなる。俺にしておけ」
涼しい風が、さわさわとしばらく吹き抜けた。
美羽は覚悟を決め、竜軌に求められた二つのことに対して頷いた。




