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その言葉を
その言葉を
胡蝶の間に運び込まれた美羽を見て驚いた真白は、急いで押入れから布団を出して寝床を整えた。
横になっても美羽の息はまだ荒い。
「もう少し落ち着いたら、シャワーで汗を流したほうが良いかも」
真白の助言に、竜軌が頷く。
「先輩。美羽さんの傍にいてあげてくださいね。何かさっぱりするような飲み物、持って来ます」
竜軌は再び頷いた。
「ああ、頼む。真白」
(竜軌)
美羽の視線に、竜軌が応じる。
「何だ。どうしたい」
美羽のバッグに入っていたメモ帳とペンを取り出して美羽に渡す。
〝靴を汚してごめんなさい〟
靴屋の店主にオーダーメイドで作らせた革靴を、竜軌は特に気に入って履いていた。
「そんなことで謝るな」
〝何かに怒ってる?〟
「そうだ。だがお前は関係ない」
〝見え透いた嘘〟
「……………」
〝最近ずっと、何かに怒ってた〟
「…顔には出ていない筈だがな」
〝わかるわよ〟
美羽の唇が笑みの形になる。
額に竜軌が手を置くと、目を細める。
「お前を守ってやる。美羽。俺を信じられるか」
〝信じる。竜軌〟




