そうだけど
カフェで真白はコーヒーを飲み、剣護はチョコレートパフェを食べている。
両手でカップを包み、真白は上目遣いで剣護を見た。
「剣護、ありがとう」
「いよいよストーカーじみてきたな、あいつ」
「…ん」
「またお前はお前で、どっか甘いし」
「――――――荒太君が知ったら呆れるかな」
「いや。全力で青なんちゃらの排除にかかるだけだろ」
面映ゆくて真白は顔を俯ける。
その焦げ茶色の頭をわしゃわしゃと剣護が荒っぽく撫でた。
「だーいじょうぶだよ、しろ」
次の上目遣いは潤んでいて、剣護は内心どきりとする。
淡い色の唇が動く。
「うん。早く帰りたい」
その心は、早く荒太に逢いたい、ということだ。
剣護は静かに笑んで、最愛の妹の願いが叶うよう祈った。
その頃美羽は、森兄弟の誰であれば探検団に加盟してくれるかで頭が一杯だった。
長可はユーモアが通じそうに見える。
伝兵衛や千丸は難しいかもしれないが、彼なら或いは勧誘すれば快諾してくれるのではないか。
竜軌は彼を道楽者の遊び人と評していたが、それ即ち探検団にぴったりの人柄ではないだろうか。
「何か物騒なこと考えてるだろ」
後ろから竜軌に抱きすくめられる。
「りゅうき」
〝あなたほどじゃないわ〟
それを読んだ竜軌の身体が笑いで揺れるのを美羽は感じた。
癪になって、美羽は竜軌のエクステを軽く引っ張る。
「こら。やめろ。悪戯蝶々はお仕置きしてしまうぞ。夜に」
肩に竜軌が顔を埋めた。
そこの肌を吸われるのを感じる。
(別に良いもの…)
竜軌と汗ばんだ肌を重ね合わせる夜を想像して、美羽は今から悦楽に鳥肌立つ思いだった。身体に回された竜軌の腕をきゅ、と掴むと、ますます腕に力が籠る。
「何だ?今欲しいのか?堪え性のない女だな」
若干、にやついた声。揶揄する響き。
(竜軌の莫迦)
そうだけど、そうじゃない。




