一人より二人、二人より一人、
一人より二人、二人より一人、
意見が通らないと悔しげに唇を噛む。
それは帰蝶も時折、見せた仕草だった。
(こいつ、妙なところが変わってないな……)
喜ぶところか呆れるところか。
竜軌の内心をあからさまにするなら、彼は大いに呆れ返っていた。
顔が微かに赤いところを見ると、美羽も自分の言動の非常識さや、招き得る危険性などは承知しているのだろう。
(煩わせる女だ。この女はいつも、俺を煩わせる)
「……お前は俺が横に寝て、普通に眠れるのか」
美羽は些か自信無さげに頷いてから、言葉を書く。
〝ダメなら部屋から出て行って〟
「何なんだ、その極端な二択は」
美羽を一人で苦しませたくない。泣くのであれば傍にいてやりたい。
例え真白であってもその役割を譲りたくはない。
乱暴な物言いの裏でそう願うのが竜軌の弱味だ。
その弱味を手放せない以上、選択肢は一つだった。
(――――――二十五の男が十八の女に添い寝だと?)
改めて、非常識さに頭痛がする思いだった。
そして竜軌が横に並んだ途端、美羽はスコン、と眠りに落ちた。
昼間の疲れも出たのか、すうすうと寝ている。
ちょっと待てこの女、と思ったのは竜軌だ。
莫迦莫迦しくなり布団から出ようとすると、ぱちりと目を覚ます。
浴衣の袖を掴み、どこへ行くのかと目で訴える。
数回それを繰り返し、精神的疲労から、竜軌も美羽の隣で眠ることに辛くも成功した。
結果として夢すらも見ない眠りを提供されたのは竜軌のほうだった。




