男同士の大事な話がある
男同士の大事な話がある
竜軌はどうしても京都に行く前に荒太に話さなければならないと言って、会話を聴き取られないくらいに美羽を遠ざけて、携帯の向こうに厳かに問いかけた。
「それでどうなんだ、実のところ。真白の下着の色は。白だろう。白の筈だ。そうでなければおかしい」
『誰があんたに教えるか』
「何なら俺が純白の総レースをセットで贈ってやる。透け透けのやつ。着用した画像を寄越すなら金は取らん」
『三枚に下ろすぞ。美羽さんはさしずめ赤だろ』
「は、所詮はその程度が凡俗の思い及ぶ限界だ」
『目測には自信がある』
「さあてどうかな。鬼小路聖良嬢は黒に違いないと俺は思うんだが、お前はどう見る、荒太」
『ああ、成利どのの待ち受けを見たが、黒でまず間違いないだろう。それか、濃いピンクもありだ』
「ではそのあたりの方向性で話をまとめよう」
『しかし旅行中、美羽さんに何もしないで耐えられるのか』
「すごくちっちゃい春画を携帯する。ばれないように」
『それで足りるのか?』
「要は想像力だ、荒太。春画をちら見して、この女は美羽、男は俺、と自分に言い聞かせる」
『泣けて来ないか』
「要は想像力だ」
胡蝶の間の端から真剣な顔で口を動かす竜軌を見ながら、美羽はきっと自分に関するとても大事な話を彼はしているのだと信じている。男同士の大事な話があると言った竜軌は、そう信じさせるに足る真っ直ぐな瞳をしていた。
いつでも竜軌は美羽を愛してやまないのだ。




