点灯器と先輩
点灯器と先輩
蘭に付き添われ新庄邸を辞するべく玄関に向かう聖良の跡を、美羽はとてとてとついて歩いた。
竜軌と合わせて四足分、スリッパの音がペタペタパタパタと長大な廊下に鳴る。
美羽は聖良が数歩進んでぱ、と振り向けばぱ、と顔を輝かせる。また数歩進んでぱ、と振り向けばぱ、と顔を輝かせる。聖良に反応する点灯器のようだった。聖良の豊かな胸が「きゅうぅんっ」と音を立てた。
蘭はにこにこして、竜軌も微笑を湛えて二人の様子を見守っていた。
「またお邪魔してもよろしいでしょうか」
広い玄関に着いて、聖良は本心からそう訊いた。
竜軌は是非、と返し、美羽は大きく頭を上下に振った。
聖良は無自覚に天使のように笑った。
蘭は口元を手で押さえ胸中で叫んだ。
(ひゃひゃっくまんボルトの輝き降臨、こは何としたことかぁ!)
「聖良嬢が気に入ったか?美羽」
胡蝶の間に戻り、美羽の髪に指を絡めながら竜軌が面白げに尋ねた。
美羽はうんうん、と頷く。
〝見た?お辞儀を丁寧に返してくれたの。良い人だわ。蘭、お目が高い!〟
「ああ。思ったより心根の良い娘のようだ」
竜軌の声も満足していた。
〝それにオニかわエロエロス〟
「言いたいことは判るが日本語は正しく使え」
〝悪魔か天使かわからない名前もクールでかっこいいけどコードネームを募集中〟
「―――――まっとうな幸せを掴もうとしている女性を悪の道に引き摺り込むな」
美羽が鼻筋に皺を寄せた。鼻息も荒くメモ帳に文字を書きつける。鼻息で紙が湿りそうだと見ている竜軌が思うくらいだ。果たしてそうやって書かれた台詞は。
〝悪、違う。探検団は正義の味方!!〟
正義の味方のフレーズの周りにはキラキラを表わすイラスト入りだ。だが竜軌の返事はつれないものだった。
「うん。面倒臭い。すごく」
〝マダム・バタフライは探検団で天下統一を果たすのだ〟
美羽の野心は当初のそれからだいぶ逸れて来ている。
「やめとけ、疲れるし俺はもっと疲れるし金もかかる。先輩として忠告しとく」
〝どのへんが先輩っちゅうんじゃあほんだらあ〟
「ああ面倒臭い……」




