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あとから追っかける

あとから追っかける


 階下に住む兄たちのキッチンで、真白は剣護の料理のアシスタントをしていた。

 洗ったピーマンを剣護に手渡すと、剣護はそれをまな板の上で縦半分に切り、へたと種を取り除くと更に切って一個を八等分にした。

 慣れた手つきで作業を続けながら口も動かす。

「しろ。京都、俺も行くからな」

 真白の花の唇が開き、蕾に戻るように閉じて、また開いた。

「…どうして?」

「荒太にお使い頼まれたんだ。調理器具とあと、お前に匂い袋を買ってくれってさ。真白にぴったりなの、選んでやるよ」

 フライパンに胡麻油をひいて温めながら、剣護がにっかり笑う。

 程良く油がフライパン全体に行き渡り熱を持ったタイミングで、切ったピーマンを投入するとザッ、と油が鳴る。フライパンを揺らしつつ菜箸で適当に炒めながら剣護は続けた。

「でも俺はあとから追っかける。行きの新幹線内では兵庫と凛がお前のガードだ」

「…うん、」

 砂糖を少量入れ、醤油を二回ほど回しかけて味付けし、炒め終える。

 胡麻油の香ばしさに醤油の匂いが加わってキッチンを満たしリビングまで流れる。

 真白が準備しておいた小石原焼の鉢に盛って、お手軽、簡単なピーマンの甘辛炒めの完成だ。剣護はピーマンを生でマヨネーズをつけてかぶりつくのも好きだが、同居人である弟の怜の手前、料理としての体裁を一応は整える。

「ごちゃごちゃ考えるなよ。荒太の愛が深いってだけの話だ」

 だが真白の面は複雑な色合いの空のようであった。

「剣護も、それで良いの?」

「もちろんだ。さて麻婆豆腐も出来てるし。真白。食器を出し終えたら適当な量をタッパーに詰めて、荒太のぶんと一緒に持って行って良いぞ」

 体調が万全でない荒太と料理の出来ない真白の為の配慮だ。

「手伝い、ありがとな」

 剣護が昔から変わらない仕草で妹の頭を撫でる。



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