籠に入らない
籠に入らない
園遊会の話を聴いた真白は、自分も出席すると言った。
やっと柔らかく笑うようになった蝶を、厳しい風から庇ってやりたかった。
しかし夫は大いに異を唱えた。
「絶対、ダメ」
「美羽さんを一人に出来ないわ」
「その為に新庄がいるんだろう。最近は美羽さんもあいつを頼ってる。良い傾向だ。真白さんがそこまでするのは出しゃばりだよ」
「……でも」
「絶対、ダメ」
荒太の懸念事項は偏に、愛する白い花に虫がたかることだった。
「荒太君も一緒に出てくれたら…」
「来週の土曜日だろ?仕事が入ってるんだよ。真白さんについててやれない。だから絶対、ダメ」
「じゃあ、剣護に来てもらうとか」
「ぜえっったい、ダメ!!」
があっと吠えるように荒太が叫ぶ。真白は目を瞑って耳を塞ぎ、暴風のような声を遣り過ごしたあと、代替案をそろりと提示した。
「…次郎兄でもダメ?」
焦げ茶の瞳が荒太を窺う。
前生における真白の次兄・江藤怜の容貌を思い浮かべて、荒太は考えた。
真白が園遊会への出席を譲らない場合は、そのあたりで妥協するしかない。
荒太が顔を覆って嘆く。
「あああもう。真白さんに勝てない自分が憎い。そして真白さんも憎いって言いたいけど、心底愛してる」
「私は優しい旦那様がいて幸せです」
「…………あんまり見映えしない服、着て」
荒太は小声で、せめてもと妻に譲れないリクエストをした。




