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レモンイエローについて

レモンイエローについて


「行かせておやりなさいよ」

 夜、成瀬家を訪ねた兵庫は琥珀色の液体を揺らしながら、ソファに座って荒太に言った。

 美羽たちの京都行き、それに伴い予測される真白の心情の件を聴いての勧めだ。

「しかし斑鳩も黒も江藤も今は動けない。水恵も」

 荒太もウィスキーを飲んでいる。病み上がりなので舐める程度に。真白は夕飯の食器を洗っている。湯沸かし器のシャワーと食器類がぶつかる音、そして真白の小さなハミングが耳に届く。

「で、兄上様にお任せする度量もない、と」

「剣護先輩は激レッドゾーンだぞ?真白さんと京都で、間違いでも起こったらどうする」

「なら俺がお供しますよ」

「イエローゾーンも却下。どうして安全領域の奴らは忙しいんだ、くそー。…逆か。レッドやイエローが甲斐性無しで暇でぶらついてるって理屈か。俺の真白さんは甲斐性無しキラーなのか」

「失礼な。自立した大人に向かって。それにその理屈だと荒太様ご自身も甲斐性無しってことになりますよ?剣護様だって数年後には立派に社会でやってらっしゃいますよ。器量はある方です。…そうですねえ。回り回って凛とか」

 荒太の脳裏に二十歳になっても可愛い少年のような忍びの顔が浮かぶ。

「凛?凛か…。ふん、ほんと回り回ったな。あいつは、レモンイエローゾーンというか。まあ真白さんと色っぽいムードにはなりそうにないなあ。てか、まともな恋愛経験あんのか?凛って」

「どうでしょう」

「私がお供致しましょうか」

 だみ声が割り込んで響く。

「うーん。でもあいつ、気働きがさ」

「まだ子供ですからね」

 籠ベッドから聴こえた仰向けに寝ていた猫の声は、見事に無視された。

「でも俺より身軽なんだよな、動きが速い速い」

「そこは七忍随一ですよ。ちょっと子ザルみたいですよね」

「言えてる。目がぱっちりしてるしな」

「針の腕も確か」

 荒太はカラカラン、とグラスを揺らす。水っぽくなって美味しくないがお代わりも出来ない。

 花の心と身を守る役を誰に託すか。

 思案のしどころだった。



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