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シーソー

シーソー


 硬直してしまった美羽に、これでは当分手が出せない、と竜軌は思う。

 抱きすくめて、後ろから首に顔を埋めると戸惑うように身じろぎするが、構わずにそのまま黒髪を匂う。

 美羽が停止の声を上げる術も持たないのを良いことにつけ込む。

「美羽」

 耳元で低く呼ぶ。

 美羽はどんどん縮こまって行く。

 これでは苛めているようだと思い、渋々、腕を放す。

 すると美羽は勢いよく振り向く。

 懸命な視線で竜軌の首に飛びついて来る。

 おい、態度を統一しろ、と竜軌は頭の中で突っ込む。

「……お前は解らん」

 それでも、腕に飛び込んだ蝶を離すことはない。

「着物が出来たと言っていた。明日、一緒に行くか」

 美羽は抱きついたまま、コクンと頷いた。



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