46/663
シーソー
シーソー
硬直してしまった美羽に、これでは当分手が出せない、と竜軌は思う。
抱きすくめて、後ろから首に顔を埋めると戸惑うように身じろぎするが、構わずにそのまま黒髪を匂う。
美羽が停止の声を上げる術も持たないのを良いことにつけ込む。
「美羽」
耳元で低く呼ぶ。
美羽はどんどん縮こまって行く。
これでは苛めているようだと思い、渋々、腕を放す。
すると美羽は勢いよく振り向く。
懸命な視線で竜軌の首に飛びついて来る。
おい、態度を統一しろ、と竜軌は頭の中で突っ込む。
「……お前は解らん」
それでも、腕に飛び込んだ蝶を離すことはない。
「着物が出来たと言っていた。明日、一緒に行くか」
美羽は抱きついたまま、コクンと頷いた。




