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あなたの目
あなたの目
竜軌の撮る写真は、甘さがなくて優しい。
烏がごみを漁る。それを油断ない目で見る、痩せこけて汚れた猫。
そんな、およそ〝美しい〟と呼べない光景さえ、彼の写真を見ると納得させられる。
ただそこにある命の刹那。
突き放すようで包み込むようで。
竜軌が写した写真をたくさん、自分の周囲に並べてそれらの真ん中に座ると、竜軌の視点に包まれているようで安心する。気持ちが和み、喜びが湧く。
「美羽。良いか」
竜軌の声に、鉦を鳴らして応じる。
「…またお前は、子供みたいなことを」
呆れたように言われるが、美羽は笑う。
〝竜軌の写真、好きだもの〟
「ふうん。俺とどっちが?」
美羽は誤魔化すようにそっぽを向く。
「自分の写真に妬くというのも、莫迦げているな」
ぱらぱら、と竜軌が、美羽の周りに円を描く写真を数枚、取って落とす。
〝竜軌、人は撮らないの?〟
「余り興味がなくてな。お前なら撮っても良い。面白いかもしれん」
ぶんぶん、と首を激しく横に振る美羽の後ろに竜軌が回る。
言葉も無く背後から抱き締められて、息が止まるかと思う。




