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ストライクゾーン

ストライクゾーン


 美術館を出て聖良を自宅近くまで送り届けたあと、蘭は新庄邸までの帰路に就いていた。

 消炭色のコートを纏い、物憂い顔で歩く彼は主に女性の通行人の視線を集めていた。断りもせず写メを撮る女子高生までいる。

 それも数限りなく経験して来たことなので、蘭は我関せずと歩いていた。

 吹く風は次なる季節、冬を感じさせるものになりつつあり、それを消炭色のコートで防ぎ蘭は聖良の顔を思い浮かべていた。


 槍が大好きな女性などざらだ。


 一般常識である。

 だが聖良はとても好き、大好き、と言った。

 きっと蘭に気を遣ってくれたのだ。

 この一件は蘭の聖良に対する好感度を高めたが、聖良が天使属性である可能性をも高めてしまった。


 小悪魔が、良い。


 蘭は請い願う。

 

 願わくば、我に小悪魔レディを与えたまえ、と。

 

 戦国時代、中国地方の尼子氏に仕える忠臣であった山中鹿介が言ったとか聴く台詞を、蘭は借用し、自分の心情に合わせて変換した。山中鹿介が知れば嘆くか笑うか怒髪天を衝くだろう。

 濃厚な香水の匂いは魅惑的で。

 笑み交わした顔は愛らしかった。気合を入れたとギリギリで感じさせまいとする、特別な日用だろうと察せられるメイクもいじらしい。


 風が蘭の前髪を揺らし耳をくすぐる。


 聖良の声もまた、耳をくすぐるようで。


 蘭は眉をひそめてくしゃり、と荒っぽく前髪を掻き上げた。

 品行方正な青年にしては珍しい仕草だった。

 聖良といると楽しく、心が浮き立つのは事実だ。

 だが残念ながら聖良には、小悪魔的要素が低く見受けられる。

 

 ゴーギャンが好きでも、ワーグナーが好きでも、小悪魔でなければ蘭は萌えないし燃えないのだ。



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