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猫である

猫である


 嵐と、そして若雪に使われるようになり、山尾は「山尾」になった。

 彼らの下で忍びとして働くのは、悪くなかった。

 仲間は皆、山尾と同じく過去に何がしかを抱え、それを乱世の、現の常として生きていた。割り切らねば停滞し、腐る他ないと知っていた。

 主君らは仕えるに足る相手だった。

 務めは遣り甲斐があり、喰うに困らぬ。

 だがそこはかとなく、時に空しく吹く風。

 人はつまらん、と思った。

 いっそ犬や猫のようであれば、このように思い煩うこともあるまいにと。


 巡る来世があるのなら、犬か猫になりたい。


 いつしかそれが口癖になった。


 本能寺の変で兵庫や片郡ら同胞の死を見送りながら、山尾は嵐より若雪より長生きした。

 最後は病を患い果てた。世は徳川のもと、泰平を迎えていた。

 障子戸を開けた縁の上、そのころ度々、庭を訪れていた三毛猫がじいっと山尾の命尽きる様を見守るように座っていた。


 それが猫に生まれ変わった決め手となったのかもしれない。



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