あの男の行く末
あの男の行く末
(押崎佳世か。プチ・フラワーと言うより哀れな生贄の子羊…)
竜軌は、「何、これ、どゆこと、え!?誰かっ、え?」と顔で叫んでいた少女を、ちょっとだけ可哀そうに思っていた。待ちに待った探検団の新メンバーだ。美羽は飢えた蝶のように、しがみついた花から離れまい。
いたく不憫とまで思えないのは、美羽が探検団活動にまた夢中になり、竜軌をほったらかしにする先々が見えるからである。足の怪我が治るまでは外出して写真撮影することも叶わない以上、蝶と戯れて過ごしたいのに。
(夜をおあずけするからにはそのくらいの気配りを見せろ)
独り、胡蝶の間で美羽の浴衣を抱き締めて悶々としている。
重症だった。
浴衣は所詮、抜け殻だ。
中身が欲しい。裸体の、蝶が。
(唇とか、舌とか、首とか胸とか、そこらあたりで我慢。我慢大会だ。クリスマスまで。俺の莫迦野郎が。美羽にほだされやがって)
愛する小娘の言いなり。
そして満足していない訳でもないのがまた癪に障るところだ。
(親父が一言、うんと答える日は来ない。そう、元凶はあの男だ)
色々と事情があるのは承知だが、真白と荒太が羨ましい。
夫婦という名目の元、誰に憚ることなく愛し合える。
(…しかし、門倉剣護は)
哀れな男を思う。
哀れと言うなら自分より佳世より、比較にならないくらい哀れだ。
門倉剣護は一生、ただひたすら雪を想ってそして死んで行くのか。




