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やんちゃ盛り

やんちゃ盛り


 荒太に先んじて力丸が退院した。

 これすなわち、探検団の活動再開を意味する。

 合い言葉は。

「りゅうき!」

「トカゲ!」

 もしくは。

「トカゲ!」

「りゅうき!」

 これで定着した。竜軌はもういいやと放置している。

 坊丸ことミスター・レインは、力丸ことランスロットが病院からぬいぐるみの山やらフィギュアなどをどっさりお持ち帰りし、いよいよ室内における自分の陣地が侵されつつあることを嘆いていた。見渡せば、おさるさん、おさるさん。そしておさるさん。

 部屋に猿山が出来た。

 巨大ゴジラのぬいぐるみがおさるさんたちに負けている。

 力丸の莫迦、と思う。

 やっと包帯が不要になった両目で見る光景が、なぜこれでなければならないのか。

 彫りかけの武将フィギュア。彫刻刀、『仏像彫刻のすすめ』など、渋さ一辺倒の作業台や辞典、歴史書、学術雑誌等が並ぶ机の雰囲気が台無しにされている。

 

 美羽は力丸を訪ねて兄弟の部屋に来ていた。

「りゅうき」

〝もう普通に歩けるの?二人とも〟

 マダム・バタフライが訊けば、ランスロットとミスター・レインは頼もしげに頷く。

「はいっ、まだ少し、壁に頭をぶつけたりもしますが。まあそれは、隻眼になる前からですし」

 ランスロットが不名誉を恥じることなく笑顔で明かす。

「瞼の傷は塞がりました。時に痛みますが、概ね、問題はありません。次は飯富虎昌を作りますぞ、マダム・バタフライ」

 おお、と美羽の顔が輝く。

〝おぶとらまさ!〟

「然り!美羽様お気に入りと伺い、そのような渋どころならば私の、ノミを振るう手も進むというもの。鋭意、製作中でございます」

 わーい、わーい、と美羽が万歳して喜んでいる。

〝躑躅ヶ崎館は?〟

「史料があれば努力は惜しみませんが。如何せん、私は見たことがございませんし」

 そっかー、と美羽は俯いた。

 美羽は武田信玄の居城をその名前から、躑躅が咲き乱れる夢のような建物だと間違った想像をしている。実際は無骨で重厚、色気の無い武家館なので、史料が無くて幸いだったかもしれない。美羽のドリームは守られた。

〝ホワイト・レディもじきに来るわ。そしたら基地に行きましょう〟

 橋の下である。

 ミスター・レインが考える顔をした。

「寒くなって来ましたからねえ。ホワイト・レディはお丈夫でもありませんし。場所を変えたがよろしくはないでしょうか?」

「りゅうき、」

 そうね、そうだったわ、そうしましょう、と美羽は言った。

 悪童が再び動き出す。



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