表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
430/663

白黒真白、藍と緑

白黒真白、藍と緑


 真白が泣く理由は言わずもがなだった。

 だから荒太は黙って彼女の頬の涙を拭った。濃紺に白い肢体がほう、と浮き出て。これより美しいものはない。真白は刺すようではなくやわやわとした明るさを放つ。

(天女が泣いてる)

 雫を光らせ、静かに。神話の一場面のようだ。

 布団の一枚くらいあれば良いのにと思う。羽毛が詰め込まれた肌触りの良い麻のカバーで真白を包んでやりたい。一緒に包まれたいとも思うし、生まれ落ちたままの姿の真白を見ていたいとも思う。無粋な布などで隠さず。


 動きを受け、細くたおやかな腕が荒太の背中を彷徨う。


(苦しんでるね、真白さん)


 ひどい男たちなんだろうか、と自分と剣護を思い浮かべる。

 愛をぶつける一方は楽と言えば楽だ。こんなに愛していると主張し、見返りなど要らない顔をしながら本音では欲している。羊の皮を被って、害する気持ちなど寸毫も持たないとどこ吹く風の様子で。


 嘘っぱちだ。


 愛される女は責め苦のように項垂れているのに。


 ごめんなさいと言われれば、良いんだよと笑う。

 愛する男はそれで済む。

 選び切れない彼女が悪者になる。悪い女と後ろ指さされる。

 潔癖で高潔な人を藍色の風は貶めているのだ。

 緑の目の太陽も、同じ穴のムジナ。


 白雪は荒太が触れるとくちづけると溶けるのでなく桃色に染まる。

 今夜、真白は声を出さない。吐息を洩らすだけ。


 吐息を洩らす。熱い、湿るような。


 疼く。


 突き上げるように凶暴な気持ちが湧いて声を聴きたくなる。悲鳴のように高い声を。

 懇願を聴いて聴いて聴いて満足したら、許さないと笑って苛める。

 愛に勝る者の権利とのたまって。

(真白さんが悪いんだよって言う)

 悪い男。


 だが荒太は愛情の善し悪しのボーダーラインが解らない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ