表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
428/663

せつせつ

せつせつ


 荒太は意表を突かれた。真白の結界の基本色は白、または青紫なのに。

 目の前にはどこまでも濃紺が広がっている。深い苦悩のような。引き裂かれる痛みのような。

 真白の言霊に応じ、振り向くと荒太はここにいた。

 真白も立っていた。丁度、先日渡りかけた三途の川幅と同じくらいの距離が二人の間にはある。ユーモラスな記憶を荒太は思い出してしまった。

 荒太と同じ白いパジャマ姿を、サラサラした焦げ茶色の髪が彩っている。

 どちらも、先を争うように駆け出した。互いに向かって。

 荒太はやはり筋力の衰えを感じずにはいられなかったが、懸命に足を動かした。空腹も響いている。転ぶような見っともない姿だけは晒せないと思った。

 やっと華奢な手首を掴む。この、感触。折れてしまいそうで心細くなるような。引き寄せるのと、真白が身体をぶつけてくるのは同時だった。

「…――――――真白さん―…」

 真白は言葉も無く荒太に縋りついた。

 言葉を超えた体温に餓えていた。

 荒太は恋しい焦げ茶色の香りを嗅ぐ。地に落ちると、焦げ茶色は扇のように広がった。

 お揃いのパジャマで良かったと荒太は思う。夫婦だ。

 お揃いのパジャマを着てお揃いに肌を見せる。結界内に寒風が吹かなくて幸いだ。真白に風邪を引かせる心配が減る。

 白を脱がせると更に真白い色が荒太を温かく待つ。

 雪白が香り立つ。







挿絵(By みてみん)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ