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期間限定

期間限定


 夕食の席で美羽は竜軌に報告した。

〝力丸のお見舞いに行ってね、変わった子に会ったわ〟

「そうか。メモ帳を見せながら俺の刺身をかすめ取ろうとするんじゃない。この泥棒猫」

〝猫じゃない!〟

「そうだったな、いたずら蝶々だったな」

 ぼんぼんなのにけち臭い。美羽は箸先を唇でつまんで竜軌を上目遣いに睨んだ。

〝マグロのトロと私とどっちが好きなの〟

「莫迦だな、美羽。超短期限定で鮪のトロに決まってるだろう」

〝私は長期間、あなたとトロとの狭間で揺れ動くわ〟

「一切れやろうと思ったがやらん」

 考えなしの発言が美羽を後悔の淵に追い遣った。

 竜軌がこれ見よがしに口を大きく開けてあーんと刺身を放り込む。

 悔しい。しかしこの場合、相手に愛が足りないのは自分なのか竜軌なのか判別が難しい。

「佐原一芯はお前の目から見てどうだった?」

 咀嚼を終えた竜軌が美羽に尋ねて来る。

〝あの子のこと知ってるの?〟

「力丸から聞いた。お前がいた時も話題には出ていたが」

 美羽に覚えはない。

〝なんだかね。変な感じ〟

「どんな風に?」

 竜軌が味噌汁椀から目だけ覗かせて問う。

〝竜軌に似てる気がしたの〟

「――――――――ふうん?」

 黒い目が椀に隠れて、ずず、と汁を啜る音。

〝冷たいところで考えてる感じ。一人で、戦ってる感じが〟

 味噌汁椀を卓上に置き、ビンゴだなと竜軌は思った。

 正鵠を得ている。

「大体合ってる。あいつにはちょっと注意しろ、美羽」

〝ちょっと、だけでいいの?〟

「ああ。今のところはな」

 そこも期間限定か、と美羽は思った。あの青色を連想させる少年に対して、竜軌は判断を保留にしているようだ。



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