じりじり
じりじり
ご飯が足りない。
荒太は病院でひもじい思いをしていた。ようやく食事が出来るようになったは良いものの、いかんせん、量が少ない。お腹の虫の合唱に、隣のベッドの男から苦情を言われること頻りだ。
一日の内ほとんどの時間、ベッドに縛りつけられている為、筋力が衰えているのが自分でも解る。体重が三キロ以上は確実に落ちているだろう。筋肉がそのぶん消えたのだ。落とすのは簡単だがつけるのは簡単でないのが筋肉だ。努力して貯めた財が一気に目減りした気分だった。飛空を万全に振るえるようになるまで、どのくらいかかるか。
(独眼竜とか。めんどい奴がしゃしゃり出て来るし)
今頃、七忍らは作戦会議だろう。
竜軌の要請を受け、荒太が命じた。本来なら自分も加わりたかったのだが。
真白にはまだ知らせていない。義龍の件が落着したばかりだ。またぞろ思い煩わせたくはなかった。早いか遅いかの問題だが、それが人情で夫婦だ。
(…他所のが伊達に流れてる。かもしれないな。尼子の鉢屋、武田の三ツ者とか、当時、主家が滅亡したあたりの忍びに目をつけるとか?…いや、風魔といい、悲運の主に対する忠義は強いだろう。伊達は、癖がありまくりだし)
思索に耽る時間だけはたっぷりある。
(黒脛巾組はでっち上げにしても政宗の攪乱好きな戦法から考えて、暗躍してた奴らは絶対にいた筈なんだよな。うわ、兵庫たちに炙り出して欲しいような、知りたくないような―――――――……)
とにもかくにも、早く真白の待つ家に帰りたい。
(うかうかしてると先輩に盗られてしまう)




