表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
418/663

頂の男

頂の男


「ぼんちゃんは年上が好きか?」

 蘭が美羽を連れて早々に帰ったあと、まだ個室に居座っていた一芯に力丸が尋ねた。

「好きだね」

「ガールフレンドはおらんのか」

「いるけど。南ちゃんが」

「隣に住む幼馴染愛らしガールが!?」

 力丸が色めき立つ。

「うん」

 そこで頷く時、一芯の顔は春風だった。

「何だと、男のロマンではないか。こらぼんちゃん、と呼ばれて怒られたりしているのか。いいなあ」

「いや、しょっちゅう怒られてるけど呼び捨てられてるよ」

「梵天丸?」

「じゃなくて、一芯って」

「強いな」

「強いね…」

 一芯の声と顔にはしみじみしたものが滲み出ていた。自分でも恐妻家かもしれないと思ったことは、これまで一度や二度ではないのだ。

 力丸は右目で一芯を見ている。

「ぼんちゃんは、天下を獲りたいのか」

 一芯は左目で力丸を見ている。

「獲りたくないよ?獲れもしないだろう。現代社会の日本で、その発想は御伽噺だ。独裁政権が敷ける地盤はとうに消えている。今更、専制君主なんて存在を誰が認める?尤も恐怖政治に対する危機感は、若い世代に行くほど薄れつつあるようだけどね。でも、頂点の男には興味がある。僕も男だから」

「例えばヤンキー学校のてっぺん、とかでは満足せんのだな」

「お山の大将になりたい訳じゃないんだよ、りっきー」

「ぼんちゃんの、深い胸の内の問題ということか。俺にはよく解らんが、ちょっと繊細な感じなんだな」

 一芯は微笑む。力丸の、ひねりのない直截な物言いと独特の勘の良さを、彼は好ましいと感じていた。友人と思うのは嘘ではない。あっけらかんとしただけの、本物の阿呆なら初めから相手になどしない。

「上様は、強いし頭いーし、かっちょいーぞ」

 濁りのない、真っ直ぐな瞳が一芯を射抜く。双眼でなくとも、十分に力を有している。

「惚れてるね、りっきー」

 こうまで力丸が竜軌に入れ込んでいなければ、自分側について欲しかったものをと一芯は惜しむ。

「うん。だけど俺は、出来ればぼんちゃんとは戦いたくないぞ」

 一芯がふ、と吐息のような笑みをこぼす。

「隻眼に慣れ、いっぱしに戦えるようになってから言いなよ。背負ったハンデを楽観視しないほうが良い。…次は死ぬよ」

 経験則に基づいた忠告に力丸は素直に顎を引く。

「そうする」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ