笑み交わして食べた
笑み交わして食べた
もこもこ、ふわふわ、とした兎の子のつぶらな瞳を見て、豊太丸は悩む目をした。
〝したがな、帰蝶〟
〝はい、兄上〟
〝私は、兎の捌き方を知らぬ。皮を要領良く剥ぐやり方も〟
〝帰蝶も、存じませぬ〟
〝ううむ。これは、困った。厨で働く女子たちは皆、怯えて兎の息の根、止めるも嫌がるであろう〟
〝親王は、どのようにして召し上がられたのでありましょうな〟
〝うむ〟
帰蝶の顔が名案を思いついたように明るくなる。
〝そうだ、信長にお願いしましょうぞ、兄上〟
豊太丸の顔も明るくなる。
〝おお、それは良い。あれは頼りになる男だ〟
〝お前ら、俺を小間使いと思うてないか〟
信長が仏頂面で兎の両耳をぷらんと掴み上げる。
〝されど信長なら、上手くやってくれるであろう?〟
〝頼まれてやってはくれまいか〟
兄妹にせがまれ、信長は大義そうに厨に入って行った。
〝…美味い〟
〝成る程これは、親王様にも献上される筈だ〟
〝子兎だからな。三人で分ければかよう、少のうなる〟
〝信長は、すごいな。いずれ帰蝶が美姫になれば、嫁いでやっても良いぞ〟
〝……うむ。信長であれば、私の蝶を託せる〟
〝真、美姫にならば考えてやる〟
〝真、なろうぞ。左様に致せ。娶らせて損はさせぬゆえ〟




