あきらかにわからない
あきらかにわからない
こんなところにあった、と驚いた。
竜軌のデニムシャツは美羽の背にかけられていた。
だから温かかった。
(ケチケチしてたのに。どうして)
また解らないことが増える。
脱衣所の、竹で頑丈に編まれた籠にそれを畳んで置こうとする。
「ああ、それは洗濯するから良い」
竜軌がそう言って持ち去り、洗濯物入れのケースに放り込む。
「お前が今日着てた物も全部、洗濯行きだ。残らず。良いな?」
何かを警戒するような口振りに、美羽は素直に頷く。言うだけの理由があるのだろう。
「それから…、」
竜軌はそこで言い淀んだ。
「お前の身体を洗って良いか」
美羽は言われた意味が掴めず竜軌の顔をつくづくと眺めた。
少し気まずそうだ。
「バスタオル無しでと言うことだが」
美羽は竜軌の顔を眺めた。竜軌も美羽の顔を見たので、広い脱衣所で二人は見つめ合う形となった。壁の一面、洗面台の向こうに設置された鏡の中の美羽たちも見つめ合っている。
不思議な人、と美羽は思った。
そこでばつが悪そうな顔になる意味が解らない。
理由はともかく、竜軌が美羽の為を思って申し出ているのは明らかだ。
気がつけばデニムシャツを惜しげもなく貸してくれていたように。いつも美羽の先に行き、美羽のことを考えて手を尽くそうとする。竜軌が口にするからにはそれなりの理由があるのだ。美羽は素直に頷いた。
竜軌が微細な息を吐いた。




