表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
363/663

寄る辺ない心

寄る辺ない心


 真白がまともな物を食べていないのではないか、と美羽は心配だった。

 他のことならば何であれ完璧にこなす美羽の憧れの女性は、料理だけはからっきし、出来ないのだ。

 料理担当の夫である荒太が入院して、きっと困っているに違いない。

「りゅうき」

〝真白さんちに、おさんどんしに行きたい。ダメ?〟

「ダメだな。心配しなくて良い。荒太がおらんでも兄貴共が真白にせっせとメシを作る」

 剣護と、それから怜のことだろうか。

 荒太が入院してから、竜軌は美羽と邸内に引き籠っている。

 籠城という言葉が美羽の頭に浮かんだ。

〝戦いはね、攻めるほうが有利なの。主導権は攻撃側にあるというのが、戦いの基本的な原則…。守る為に攻めに転じるしかない時もあるし〟

 真白が世間話のように語っていた。遠い目をして。

 竜軌も蘭も剣護も。

 前生を知る人たちは、遠い目をする時が多い。昔々に残して来た自分の心を見ているのだろうか。叶わなかった願いや、果たせなかった夢や幸せを。

 そうしてこちらに目が戻り、美羽を見ると、微かに笑う。

 ほんの束の間、親に存在を忘れられた小さな子供になった気分に、美羽は陥るのだ。

 寄る辺ない心に。

 全てを思い出せば美羽も、遠い目をする仲間入りが出来るのだろうか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ