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四歩

四歩


〝この間は何を撮ってたの?〟

「百合の木だ。北米東部原産の落葉高木。あの公園の木は花が遅咲きで、今頃咲く」

〝どんな花?〟

 竜軌の表情が柔らかくなる。

「黄色と黄緑の中間くらいの、チューリップみたいな花だ」

 バスの中で、竜軌は色々と説明してくれた。

 どうしていつも運転手付きの家の車に乗らないのかは尋ねなかった。

 竜軌は撮影現場まで、自分の足で向かいたいのだろう。バスに揺られて。

「弁当の中身は何だ?」

〝筑前煮と卵焼きとお握り。…だけ〟

「品数はそれで良いが、俺は量を喰うぞ」

〝お握り、たくさんあるわ〟

 竜軌が満足そうに笑んだ。

 美羽は澄ましていたが、嬉しかった。真白に借りた麦藁帽を、深く被り直した。

 森林公園前のバス停に着くと、竜軌が思い出したように、美羽に虫除けスプレーをかけた。かなり念入りだった。藪蚊が多いのだそうだ。

「前に何箇所か刺されたが、まだ赤い」

 公園を歩きながら、竜軌が右腕を見せる。

 固く引き締まった腕には、確かに赤い斑点が幾つかあった。

 美羽は自分の腕と見比べる。太さが全然違う。

「痕が残る場合もあるからな。お前は気をつけろ」

 竜軌の忠告に深く頷いた。

 先日来た時は気付かなかったが、百合の木は背が高く、大きな葉を持つ樹だった。

 そして竜軌が話したように、確かに点々と黄色っぽい花が開いている。

 大きい花だわ、と思う。

 美羽にカメラバッグを預けると、竜軌は早速、カメラを構えて撮影を始めた。

 蝉の声は降るように聞こえるが、木立に囲まれているからか、空気は街中より涼しい。

 美羽は竜軌の姿を見ていた。



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