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いつか来た川

いつか来た川


 荒太は目の前に流れる川を見ていた。

 見惚れているのでも怯えているのでもなく科学者のように観察していた。

(状況から判断するに、これは、あれやろ。三途の川やろ。うわー初めて見た。気いする)

 前世で死んだあと、渡った覚えまでは無い。

 川幅は広く、流れは透明で清らか。魚影が見えないのは当然かもしれない。

(いかにもやな。…どこかに試験管ないか。水を持ち帰って調べてみたい。プランクトンとかおるんか?飲んだらどないなるんやろ)

 陰陽師としての研究意欲である。

 流れに手を浸けると驚くほど冷えていた。

 慌てて手を引っ込める。

(つめて…っ、冬の川か!えっらい冷えて)

 冷えて。

 冷えていた真白の肩。

(……俺のせいや。俺のせいで体冷やして、俺を慰める為に無理してデートに誘ってくれて。解ってたのに俺はそれに甘えて、風邪をひかせた。…で、記憶が確かなら真白さん、また泣いてた。最低。おかめうどんも作りかけや。ああ、切った具材を空気に晒し過ぎたらあかんのに。朝林の奴、仕掛けると解ってたらサランラップをかけといたのに阿呆―――――――――)

 悶々としていると、対岸から視線を感じた。

 すごく見覚えのあるような、無いような。

 腕を組み、怒った顔で荒太を睨む、すっきりとした着こなしの若武者が立っている。

(濃紺の上衣に萌葱の袴。悪うない。…優男やけど、腕は立つな。得物も良さげ)

 荒太は対岸から睨んで来る男に、合格点を出した。

(で、誰や。ひいひいじいちゃんのそのまたひいひいじいちゃんのとかか?)

 それにしては目付きが悪いと言うか、目が冷たい。川の水と張り合っているのかと疑うくらい。

 これが自分の子孫に向ける眼差しだろうか。

 もうすぐお決まりの「まだ早い」とか「帰りなさい」とか言われそうな雰囲気ではない。

「おい、あんた―――――――」

 誰や、と訊こうとしたら先んじられた。

「何しとんねん、このボケェッ!!」

「いやお前が誰やねんっ!」

 大音声に、荒太も思わず怒鳴り返した。



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