表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
345/663

そうだよね

そうだよね


 説明する医師も自分の発言に懐疑的な表情を隠せずにいた。

 急性虫垂炎が化膿性腹膜炎に進行。

 しかし突発的過ぎる。

 今の今まで何の兆候も見られず、自覚症状すら無かったのはおかしい。

 極めて稀な症例と言える。

 ともかく全力を尽くすが、手術中には予期せぬことも起こり得ると真白を窺うように見て、最後を締め括った。


 偶然。

 極めて稀に、突発的に。

 呪術のスペシャリストが倒れる。

 降って湧いたようなこの展開を僥倖と捉えるのは誰であるか。

(否)

 ラッキー、アンラッキー、そのいずれでもない。

 取るに足らないクイズだと怜は思う。

(狙いが寸分たがわないな。朝林…)

 見事だと感心してやりたくなる。

 拍手を送ってから、神器・虎封の刃で喉を刺し貫いてやりたくなる。

 真白の隣に座る剣護が、壁に寄り掛からず端整に立つ弟を見た。

「おっかない顔してるぞ、次郎」

「そうかな、そうでもないよ」

 怜は微笑む。

「ほら、おっかない。お前、ポーカーフェイスが際立ってる時が一番、怖いよ。七並べしてる時もそうだったもん。アンテナが朝林の妖術だって報せてんのか?やっぱり、あいつか?」

 怜はストレートな兄に対して微笑みを崩さない。

「太郎兄は表情豊か過ぎて、逆に読めなくなる時がある。俺が教えるまでもなく、ちゃっかり正解に辿り着いてるし。俺に言わせればそっちのほうが、ずっと油断出来なくておっかないよ」

「おっかなくて当たり前だよ。俺、怒ってるもん」

 真白は剣護にしがみつき、ぼう、として、焦げ茶色の髪はくしゃくしゃに乱れている。剣護が涙の跡を拭いてやっても拭いてやっても、いつの間にかまた彼女の頬には雫がゆっくりと流れているのだ。

「そうだよね」

 妹を眺め遣り、当たり前だよね、と怜は頷いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ