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花咲くように

花咲くように


 唇を離すと美羽がほわりと笑った。

 久し振りに彼女のそんな笑顔を見た気がする。傷つけて怒らせてばかりいたからだ。

「…ごめんな」

 もう一度謝ると、美羽の頭を撫でた。

 美羽はますます笑い、童女のように無垢な笑顔を竜軌に見せた。

(変だな)

 それだけで幸せだと感じる。美羽がいなかったころの自分は、日照り続きでひび割れた田んぼのような惨状だったのかもしれない。

 やばそうなら逃げろと言ってはみたものの、美羽を再び失くしたあとの自分は想像がつかなかった。

(………見てるな、蜘蛛)

「蘭!!」

 声を張り上げると鉄棒の近くで知らんぷりして待機していた蘭が、朱塗りの大身槍を手に答える。

「砕巖、呼んであります」

「略式結界」

「張り終えました」

「よし。美羽、動くなよ…」

 樹々の葉のざわめきは聴こえるが、烏の声、子供の声、人の声はピタリと止んでいる。

 竜軌の腕の中で、空気が変わったと美羽も感じていた。

(皮肉なものだ、義龍)

 愛に狂って帰蝶を苛んだ男に、理解が芽生えている。

 彼女はなぜ自分の傍に居続けてくれたのだろうかと竜軌は今更ながらに考えた。

(尋常ではないと解っていた筈だ)

 だが最期まで共にいてくれた。

〝私も一緒に壊れてあげるわ〟

(…そういうことかな)



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