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夢も見ず

夢も見ず


 水差しと枕は辛うじて投げられることを免れた。

 蘭が竜軌の手首を縛っていた縄を解き、退室するまでの間、美羽は眉間に皺を刻んで濡れた瞳で携帯をいじっていた。

「…何してるんだ美羽?」

 竜軌が猫撫で声で尋ねる。顔にはとっておきのスマイル。

〝真白さんにメール送った。竜軌が蘭と浮気したって〟

「お前はそこに一点集中か。助かると言えば助かるが。……いや、真白にか。面倒なことを」

〝そんなに蘭が好きなら蘭と結婚すれば?〟

 子供のような憎まれ口がメモ帳に綴られる。

「それ聞いたらあいつが切腹するぞ。あとな、俺の膝の上に座って言う台詞だろうか、美羽?」

 美羽は竜軌の胡坐をかいた脚にちょこりと正座している。

〝だって竜軌から離れたら死んじゃうもの〟

「ああ、お前は莫迦可愛い。お前を見ていると莫迦と可愛いはセットなのかもしれんと思えて来る。だって手首を縛るぐらいしないと病身のお前を襲ってしまうだろうが」

 竜軌がさらっと付け加えた説明に、美羽がきょとんとした顔になる。少し頬を紅潮させて俯きペンを動かす。

〝それでプレイしてたの〟

「だからプレイじゃない、必要性だ。手を縛らせたら次は足首を縛らせるつもりでいた。俺は器用だからな。脚を使ってお前をまさぐることも出来る……そんな目で見るな」

(お、男の人ってそこまでなの。それとも竜軌だからなの……)

 竜軌に限っての可能性をとりあえず検討してみると、色々と生々しく思い出される記憶があり、美羽は真っ赤になって間近にある竜軌の瞳を上目遣いに見た。

「誘われたと判断しキスする、俺に非は無い」

 前もって宣言して竜軌が唇を被せる。

 離れたがらなかったのは美羽のほうだった。竜軌の下唇に吸いついて頑張っていたが、竜軌が笑う形に口を動かしたので放してしまった。

 もっと欲しかったと思う。

(これじゃ人のこと言えないわ)

「りゅうき」

〝ごめんなさい〟

 メモ帳を見せたあと、美羽がぺと、と竜軌の胸に顔をつけた。

「…まだ熱があるな。可哀そうに。きついだろう」

 頭を撫でると美羽が顔をつけたまま頷く。

「りゅうき」

〝離れたくないのは私のわがままだから、竜軌がそれで我慢できないなら抱いてもいいの。あなたにすごく大事にされてるってことは、ちゃんと知ってるから〟

「―――――――――女にそう言われて甘える男に生きる価値は無いな。…何もしないよ、美羽。一緒に眠ろう。何か月もお前と添い寝したんだ。耐えてみせるさ」

 

 翌日は二人とも、昼近くまで寄り添い合って寝ていた。



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