乙女に譲歩
乙女に譲歩
浴衣を着たまま入浴したいと美羽が主張する。
「…何でだ。美羽」
〝恥ずかしいから〟
竜軌は赤面した美羽を世にも不思議な生き物のように見た。
「…何がだ」
〝竜軌に裸を見られるのが〟
竜軌は赤面した美羽を世にも不思議な生き物のように見た。
「お前の言葉が理解出来ない。もう俺は見たし、触ったし、…食べると言うと語弊があるが。色々、かなり。好きにさせてもらったが……。俺以外になら見られて良いと言ってるんじゃないよな?」
火を噴きそうな顔の美羽はかぶりを振る。
〝お嫁に行けなくなる〟
「うん。戯言はそれだけか?手を退けろ。帯が解けんだろう」
「りゅうき!」
二人は檜の浴槽が待つ脱衣所で押問答していた。
「なら、とっとと自分で脱げ。手間をかけさせるな、…こら逃げるな」
脱走しようとした美羽の浴衣の襟首を掴む。
「―――――病人が暴れるんじゃない。嫌ならここで待っていれば良い」
〝竜軌からは離れたくない。怖いし、死んでしまうもの〟
脱走しようとした行為とは矛盾している。
「…良い子だな。美羽」
竜軌は溜め息を吐いた。
「汗を流さなくて良いなら、着たまま入れ。身体に負担がかかるだろうから俺も今日は長風呂はやめる。上がったら濡れた浴衣を急いで脱いで身体を拭いて、持って来た新しい下着と浴衣を着ろ。病状を悪化させないよう手早く動け。出来るか?」
美羽が頷くのを確認して竜軌は服を脱ぎ始めた。
女はよく解らんと思いながら。




