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竜宮
竜宮
竜軌は美羽の濡れた瞳を見た。
愛してるから良いよ。
そう言って許した美羽に顔を寄せ、涙の跡を舐める。
唇を軽くついばみ、はだけたままの肩をゆっくり敷布団に倒す。
真上から目を覗き込む。
美羽の目は揺らがない。
少し笑って顔を上げ、自分から竜軌に唇を合わせる。
躊躇いがちに蝶の舌が入って来るのを絡め取った。
裸身の美羽を包むように抱いた。
噛んでは舐めて吸って痣を散らした。
美羽の全身に自分を刻むように。
時々、美羽は竜軌の名前を呼んだ。
呼ばれる度に竜軌はますます酔って、溺れた。
海の底の底の、そのまた底のほう。竜宮にいる心地だった。




